第11章 狂おしいほど愛してる (番外)
『もう…上がろうか?』
「ん。」
急に真剣な顔をするから。堪らなくなって上がることを提案した。素直に頷いたマイキーを立ち上がらせてバスルームを後にする。
『そのまま寝ないでね。ベッド濡れるし風邪ひくよ。』
「ん、乾かして。」
ドライヤーを手にした私の隣にちょこんと座って背を向ける。綺麗な白髪は昔みたいに癖がないし長くもない。随分と乾かしやすくなった。
『はい、おしまい。寝て大丈夫だよ。』
「たまには俺もの髪の毛乾かしたい。」
『珍しいね。せっかくだしお願いしようかな。』
「後ろ向いて」
珍しく私の髪を乾かすと言ったマイキーにドライヤーを渡して背を向ける。温風と優しい手が髪をすり抜けて心地がいい。
「熱くねえ?」
『うん平気だよ。気持ちよくて寝そうなくらい。』
「良かった。いつもお前がしてくれるみたいにって真似してみたんだ。」
すっかり乾いた髪を1束すくってキスを落とす彼。愛おしそうに何度も何度も。
『マイキー…寝る?』
「名前」
『万次郎。もう寝ようか』
「もっかい」
『万次郎』
「愛してるよ。」
『うん、私もだよ』
どちらからともなく唇を重ねてベッドに倒れ込む。決して大きくはない彼の手が私の頬を包んで耳を刺激する。
『…っん、』
「愛してる…俺のそばにいて。1人にしないで。…がいれば俺はそれでいいから…。」
『どこへも行かない。約束したでしょ…私は万次郎のそばにいるよ。1人になんて絶対にしない。』
「皆…みんな俺を置いてくんだ…兄貴も…場地も…エマも…他の奴らだって俺が…っ俺が皆を…っ!」
『万次郎!ダメ!私の目を見て万次郎…』
潤んだ瞳が私を捉えて揺れている。
『大丈夫…大丈夫だから。私はいなくならない。万次郎を置いてどこかへ行ったりしない。万次郎の選んだ道が正しいかは分からない…だけど私は…修羅の道だろうとついて行くから…だから一緒にいよう?』
「…っ…ぅああ、っ」
今まで堰き止めていたものが崩れたみたいに大粒の涙が彼を濡らしていく。子供のように泣いて…泣いて…疲れきったマイキーは気を失ったように眠りについた。