第11章 狂おしいほど愛してる (番外)
「ごめん待たせた」
『全然待ってないよ〜』
お邪魔します、と助手席に乗り込んだちゃん。運転席から見るちゃんもいいな。カップルみてえでアガる。
『竜胆くんの車久しぶりだ〜』
「そーね、俺あんま運転しねーし。
んじゃちょっとシートベルトしますねー。」
彼女の左肩の方からシートベルトを伸ばしてカチャリとはめ込む。
『こんなことされたら女の子皆きゅんきゅんしちゃうね』
「ちゃんにしかしねーけど」
『またまた〜』
きゅんきゅんしちゃうね、なんて言って俺には全然そうは見えない。ちゃんは俺にドキドキなんかきっとしない。言われてはないけど伝わってくるような感覚。どうしたら振り向いてもらえっかな。
「どこのスーパーいく?」
『んー、時間あるし竜胆くんさえ良ければちょっと距離あるけど大きいスーパーいきたいな。もう今週の分買っちゃおっかなって』
「ん、行こっか」
『お願いします』
「うい」
車内のオーディオから流れる曲を口ずさむちゃん。休日だからか昼間なのに車が思うように進まない。
『なかなか進まないね』
「んね、時間へーき?」
『うん、まだお昼だし全然』
「なら平気か」
『のんびり行こーう』
進まない車の中でちゃんの手を握ってみる。
『どうしたのー?』
そう言って握り返して俺を覗き込む。
「握りたくなる可愛い手だったから。」
『またそんな事いって〜
そういえば竜くんの手ってキレイだよね』
「そう?兄貴のが綺麗じゃね?」
『あー、蘭くんはなんかモデルさんみたいだよね全てが。でも竜くんも負けてない。私は好きよ。』
そう言って繋いだ手を見つめるちゃん。ずっと兄貴と比べられてきた俺にとって、俺自身をちゃんと見てくれるのは嬉しくて新鮮でくすぐったい。
「ちゃんさ」
『うん?』
「好きな奴とかいねぇの」
こんなん聞かれても困るよなあ…。
出会いなんてまるで無いだろうし、いつも俺たちと一緒に生活してるし…。でも願わくば俺とか…?
『んー、私は皆といられたらそれでいいからさぁ。恋とかそういうのは必要じゃないかなあ。』
「そ…っか。」
分かりきってた答えに若干の落胆。