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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第10章 約束 ( 北信介 )



美味しそうにケーキを頬張って、向かいに座る北さんと話しとる。その表情が柔らかくて幸せそうで。俺はそんな顔見たことない。

心のどこかで勝てると思っとった。

バレーも身長も俺の方が…。
それに顔やって負けてへんはずやねん。

せやけどさんと過ごしてきた時間とか、信頼とか…どんなに欲しくても手に入らへんもんを北さんは持っとる。

「ツム?なに見てるん」

「あ…いや」

「さんやん。北さんもおるけど。」

「おん」

「話しかけへんの?」

「話しかけられへんやろ…あんなん。」

きっとお互いがお互いを1番理解しとる、そういう関係性やねん。さんも北さんもずっと前から想い合っとったのに失いたくなくて幼なじみのままやっただけ。

最初から俺の入る隙なんてなかった。

ずっと北さんだけを追いかけてきたさんにとって俺は初めて見るタイプの人種やっただけにすぎひん。真逆な性格の俺にグイグイこられて手を取ってしまっただけや。

身体を重ねて 好き と言って貰えて。2番目でもいいと言った俺を受け入れてくれて。見惚れることしかできんかった高嶺の花が少し振り向いてくれたくらいで舞い上がりすぎてた。

戻れないほどに好きになってた。

「そんな顔するんやったら声掛けたらええやん」

冷やかすわけでもなく俺の背中を押すようにそう言ったサム。

「なあサム…俺さんのこと好きやねん。」

「はあ?今更何を言うてんねん知っとるわアホ」

「めっちゃ好きやねん。北さんから奪ってでも欲しかってん。せやけど俺の隣にいるさんがあんな表情してくれる想像がつかへん。」

「諦めるん?」

「諦め…られたらええねんけどな。」

「まあ、ええんちゃう。
諦めつくまで追っかけたら?」

「せやなあ…頑張ってみるわ。」

「おん」

奪ってまで欲しくなったのは初めてだった。でもさんが一番幸せなのはきっと北さんの隣や。たった2年やけどずっと見てきたから分かる。本音は俺が幸せにしたいけど…相手の幸せを1番に願えるほどに好きになったんも初めてや。
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