第10章 約束 ( 北信介 )
お母さんたちがよう食べとったベリーのタルト。連れてきてもらった時はまだ小さかったからゼリーとかプリンとか食べとったんやっけ。そんな私達ももう高校3年生や…。早いな。
『信介くん決まった?』
「んー、タルトがええかなって。
は何にするん?」
『私もそうしよかな思っとった。
お母さんたちがよく食べてたもんね。』
「せやんな、やからタルトにするわ」
小さい頃の思い出を辿るデートもええなぁ。色んなことを思い出して、あの頃も信介くんを好きやったと再確認して、この人の隣におりたいと心から思う。
宮くんには信介くんみたいな安心感も信頼もない。
それなのに心惹かれるのはずっと見てきた信介くんと真逆の人やから。知りたいと思ってしまった。どんなに突き放しても追いかけてくれる彼に溺れたいと思ってしまったから。
「」
『うん?』
「新しいメイク可愛ええなぁ」
『な、なに急に…っ』
「急ちゃうよ。待ち合わせた時も言うたやろ?」
『そ…んなこと言うたら信介くんやって今日なんかめっちゃお洒落やし…ほんま…かっこええ。』
信介くんのように目を見て言われへん。いつも真っ直ぐと言葉にしてくれる彼に鼓動が早くなる。
「うん、にかっこええ思われたくて変えてみてん。やからめっちゃ嬉しいで。こっちの方が好き?」
『好き…やけどドキドキするからたまにでええ…。』
「こっちのが好きってことやんな?
ええこと聞いたわ、ありがとさん」
いたずらっ子のような笑顔を見せるいつもと雰囲気の違う信介くん。ほんまドキドキしすぎて心臓に悪いねん。
こういう気持ちになる時、私はやっぱり信介くんの手を取りたいと思う。この人とおることが私の幸せやと思える。
2人同時に好きになってしまった時は2番目に好きになった方を選びなさいとよく聞く。1番目の人を心から愛しているなら2番目など現れるはずがないのだから、ということらしい。
理解はできるけど納得がいかん。
現に私はやっぱり信介くんが好きやと思うとる。安心感が違う。信頼度が違う。想ってきた時間が違う。
全部全部ちゃうんよ。