第10章 約束 ( 北信介 )
約束のデートの日。
『ごめんねお待たせ…っ』
「大丈夫やで待ってへんよ。」
『なんかいつもと雰囲気違うね信介くん』
普段はモノトーンの信介くんが今日はなんだか違う。
白いシャツによもぎ色のニットベスト、アイボリーのスラックスにベージュのロングコート。いつもと違う彼にトクンと胸が跳ねる。
「もいつもとメイクちゃうやん。
よう似合っとるよ、めっちゃ可愛ええ」
彼女のメイクの変化に気がつく男の人がどれくらいいるか分からへんけど信介くんは絶対に毎回気づいてくれる。きっと気づいてくれると分かっていても彼の口から聞くまではいつもドキドキする。
『2人ともいつもとちゃうくてなんか新鮮やな』
「せやな、なんかドキドキするわ」
そう言ってはにかんだ信介くんが私の手をとって歩き出す。
『これからどこ行くん?』
「んー、秘密や」
『秘密かぁ』
「着いてからのお楽しみやな」
繋がれた手は信介くんのコートのポケットの中でぬくもりを増す。あたたかくて優しくて安心する。
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『あ、え…ここって』
「うん、がずっと行きたがっとったプラネタリウム。」
『でもこれ全然予約取れへんのにっ』
「うちの米を贔屓にしてくれとる人からチケット貰ってん。どや、ええデートちゃう?」
『うんっ!ありがとう信介くん!』
まさかプラネタリウムに連れてきてくれるなんて。私の好きなデザイナーさんがプラネタリウムとコラボしてん。ほんまに予約とれへんくて半分諦めとった。
「喜んでくれてよかった。行こか」
『うんっ』
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素敵な空間やった。小学生のときに課外授業で行ったプラネタリウムとはちゃう。あのときはなんも考えんとぼーっと見とった。でも今日は信介くんが連れてきてくれて、信介くんが隣におって…この前の宮くんのことが嘘みたいに信介くんでいっぱいや。
『あ、ねえ信介くんっ』
「どないした?」
『昔お母さんたちとよく行ったカフェいかん?』
「あぁここから近いやんな、久々に行こか」
タルトの美味しいお店。お母さんたちのお気に入りのカフェ。昔はよく連れられてきてたから今日は2人だけで行くのもええかな、なんて。