第10章 約束 （ 北信介 ）

風呂から上がったが俺の隣にちょこんと腰を下ろした。2人きりの部屋の中。ドクドクと鼓動が早まるのを感じる。

『信介くん。』

｢うん？｣

『どうして何も聞かへんの？』

｢侑と話すって教えてくれとったし…いちいち聞くんも男らしくないかと思うて…。｣

だって怖いやん。やっぱり侑と一緒になりたい言われたらほんまに俺…どないしたらええんよ。

『宮くんに話した。やっぱり最後は信介くんを選ぶかもしれへんって…せやけど…2番目でもええからって言われてな。私断れへんかった…。』

｢…最後は俺のとこに戻ってきてくれたらそれでええよ。｣

それでええからそばにおってや。

『それだけやない…宮くんとシたの。』

｢……っ｣

シたって…が侑に抱かれたってことか？俺しか知らない蕩けた表情も、熱い身体も…もう俺だけのやない。

『それでも私のこと好き…？』

｢…好きやで。｣

朝とは違う高さで結われていた髪も。
侑と同じ匂いした身体も…気付いとった。

だからせめて…って戸惑うを風呂へと促した。

知らないふりをしたかった。

分かっていてもダメージが大きすぎるから。

『…っなん、で』

｢こんなんで嫌いになれへんよ。めっちゃ好きやねん。侑が2番目なら俺は1番なんやろ？それでええ…むしろ優越感や。｣

そうや、俺は1番目なんやから。
こんな関係間違うとるって分かってんねん。それでも好きやねん仕方ないやろ。

『信介くん…そんなの…っ』

｢間違うてるのは分かっとる。でも俺はしか好きになれんし…しかいらんから。｣

『こんなことして…それでも私やって信介くんが好き。ごめん…ごめん私なんかに縛り付けて…っ』

ごめんと繰り返すの瞳からは大粒の涙がぽろぽろととめどなく溢れている。抱きしめると小さく震えとった。

「謝らんで…縛り付けられとるとか思うてへんよ。むしろ縛り付けて欲しいくらいや。離れたくない。」

俺の背にまわった腕がきゅっと抱き締め返してくれる。まだ少しだけ濡れている髪に触れて毛先にそっと口付けをした。