第10章 約束 ( 北信介 )
やばい⋯サムおらんやん。
ほんでお母さんたちも帰ってこんやん。
朝寝坊したからこの話知らんかった⋯
まずいやろ⋯さん騙したみたいになってるやん!2人きりちゃう言うて部屋まで連れてきてやっぱ皆おらんですって俺やってること最低ちゃう!?いや知らんかってんけどほんまに!
「⋯あの、さん⋯これは、」
『知らんかってんやろ?宮くんが嘘ついたとか思ってへんから平気やで。せっかく来たし話してから帰る。』
⋯女神や!ちゃんと分かってくれとった⋯!
「ほんますんません⋯っ!」
『ええってば』
「それじゃ⋯くつろげるスペース狭いですけど全然好きなとこに荷物置いて座って大丈夫なんで」
『ありがとう』
さんが⋯っ俺の部屋におる!まあサムも同じ部屋やねんけど⋯。夢みたいや!!
『それで話やねんけどな』
「あ、はい」
いい話ちゃうことは分かっとる。
『この前宮くんが私の部屋にいたことはなんでか信介くんにバレバレやった。それと、キスしたことも話した。』
「え⋯北さんに殺さ⋯『大丈夫だよ』
「いや大丈夫ちゃいますって⋯俺死ぬんか。」
『たとえ私の気持ちが全部宮くんに向いたとしても信介くんは私を離さへん。今日一緒におるんも知っとるし。』
「さんはどうしたいん?」
『私は…私には選ぶ権利なんてないよ。2人とも好きなの。でもそんなのっておかしいでしょ…。』
side 夢主
2人ともを同時に愛すなんて器用なこときっと私にはできないし、そんなのはあっちゃいけないこと。選べないならどちらも選ばない方がいいに決まってる。
「俺さんのことになるとほんまに全部許せるから参考にはならんと思うんやけどさ…俺はええよ。そばにいられるなら2番目でもええから一緒におりたい。」
『え…?』
「さんしか好きになれへんから。」
似たようなことを信介くんも言うてた。
私はほんとに2人の手をとっていいの?
『そんなの宮くんが苦しいだけやろ…?』
彼らの時間を奪ったらいけない。
「一緒に居られない方が辛いですよ。」
真っ直ぐに私を見つめる宮くんの瞳があまりにも真剣で視線を逸らせん。