第10章 約束 ( 北信介 )
彼の手をとってしまえば戻れないと分かっている。信介くんだけを好きでいたいと言ったのは本当なのにそれでも宮くんの手をとりたいと思ってしまう私を許さないで欲しい。
『きっと宮くんのことたくさん傷つける。』
「ええよ」
『たくさん困らせる。』
「さんになら本望や」
『部活だって気まずいやろ…』
「もう3年生引退やから平気」
『やっぱり最後は信介くんを選ぶかもしれない』
「絶対振り向かせるから気にせんよ」
『…私気分屋なときあるで。』
「さんになら振り回されたい。」
『結構わがままやで…?』
「死ぬほど甘やかしますよ。
だから俺ともおってや…。」
そう言って私を抱きしめる宮くんの背に腕を回した。
私とおったってええことないのに。それでもいいと手を伸ばし続けてくれる宮くんの手を私はついにとってしまった。
「あかん、めっちゃ幸せやわ」
『後悔するで…』
「せんよ。大好きさん。」
信介くんのことなんてほんまに気にしてへんというように優しい口付けをする宮くん。
『…っ、』
「ねえ今日だーれも帰ってこんねんて。」
『う、うん…?』
「いいことしませんか?」
いい…こと。それって。
『ま、待って宮くん…「さんに触れたい」
太ももに手を滑らせて指先がスカートの中に侵入する。ピクリと反応してしまう身体を必死に抑えて彼のワイシャツを掴む。
『だ…だめ、待って…?』
「その顔初めて見ました…あんま煽らんといて」
『煽…っちが、んぅ…っン』
太ももの付け根あたりをするすると撫でながら唇を食まれてだんだんと身体の力が抜けていくのが分かる。
「さん太もも弱いん?
口ん中かな、それともどっちも?」
『わか…んない…ッ』
「俺初めてだからリードしてくださいよ。先輩。」
逃げようと身をよじらせるも力が入らない上に腰に回された腕がしっかりと宮くんへと抱き寄せられていて、とてもじゃないけど抜け出せない。
「逃げんといて…?」
『や、でも…急すぎやし…っ』
「急?俺さん好きになって2年は片思いしてたんやけど。ずっと我慢しとったのに北さんにとられて爆発寸前やったわ。」
本気の目や…逃げられる気がせえへん。