第10章 約束 ( 北信介 )
あれから1週間、私の気分は重いままだった。
朝も昼休みも放課後も晴れないまま。
もう1度宮くんと話をしなきゃ。
「さーん」
『あ、宮くん』
「スウェットずっと借りっぱやったから返しに来ました。一緒に帰りたいんやけどええですか?」
今日部活ないしってお誘いをしてくれる宮くん。話をするなら早い方がええし⋯今日にしよう。
『うん、ええよ帰ろか』
「どっか寄り道しません?
前みたいにカフェとか」
『ええよ。行こう』
「ほんまに?よっしゃ!」
信介くんには宮くんに話をするからとメールをいれた。直ぐに返ってきた信介くんからのメールには
《わかった。連絡ありがとう。
俺はが戻ってきてくれるんならそれでええ。》
宮くんと一緒におることを咎めたりはせん。最後は自分のところへ帰ってきてほしいと、ただそれだけ。
『ねえ宮くんあのさ。』
「なんですかさん。悪い話?」
『え?』
「やっぱり北さんからは離れられへん?」
『えっと⋯』
「やっぱ俺んちきてよ。ゆっくり話したい。」
家⋯家はまずいやろ。さすがに⋯だめや。
『おうちはさすがにあかんやろ⋯。』
「サムもおるし安心してください」
あ、そっか。治くんもおるんや。
2人きりちゃうんやったら平気やな。
『それなら⋯ええけど。』
「じゃあ行きましょ」
いつもと反対方向の電車に乗って初めて降りる駅につく。信介くん以外の男の人の部屋にくるのは初めてや。部屋中いっぱいに宮くんの匂いがする。なんか変な感じや。
「どうしたんですか立ち止まって」
『あ、ううん何でも⋯えと、治くんは?』
そういえばこの家に入ったとき、人の気配はせんかった。靴だって1足もなかった気がする。
「どっかで寄り道しとるんかな。電話してみますね」
すぐに治くんに電話をかける宮くん。
「サムいまどこおんの」
《今日角名んち泊まる言うたやん》
「聞いてへんし!え、帰ってけえへんの?」
《俺もそやけど母さんたちも今日は帰らへん言うてたで。ツム朝おらんかったから知らんのか。》
「え、まじ?」
《大マジや。んま、そゆことやから》
一方的に切られたらしい電話を耳から外して申し訳なさそうに私を見つめる宮くん。