第10章 約束 ( 北信介 )
好き
苦しい
好き
離さなきゃいけない
離れたくない
「⋯⋯もうもたへん」
『私も⋯イ、ちゃ⋯う』
「一緒にイこか⋯、っ」
『信介くん⋯っ』
「⋯で、る⋯っ」
『信介くんもう⋯だめぇっ』
何度もお互いの名前を呼びあって絶頂を迎えた。くたりと私に倒れ込んだ信介くんの頭を撫でて2人で息を整える。
「っは、はあ⋯っ好きやで」
『私⋯酷いことした⋯のに。』
「関係ない。愛してる。」
真っ直ぐに私を見つめて愛の言葉を何度も吐き出す信介くんに心臓が鼓動を増す。愛してるなんて⋯⋯信介くんは思ってもないことを簡単に口にする人じゃないから、彼の言う愛してるにはそれ相応の想いがある。
『関係ないなんてこと⋯』
「がおってくれたらそれでええんよ俺は。がおらんくなったらこの先俺は誰も好きになれへん。」
信介くんの愛はきっと少し重い。
私にはそれが心地よかったはずなのに。宮くんにフラフラせんかったらこの愛をちゃんと受け止められた。私も愛していると返せたらええのに⋯それを言うことはきっと許されない。
『私は⋯私を許せん⋯。
信介くんだけを好きでいたかった⋯っ』
「さっきの好きは嘘だったん?」
『嘘じゃない⋯っ』
「それだけで十分や。」
『でもっ』
「言うたやろ、離してあげられへん。」
素肌のまま抱き合って触れるだけの口付けをする信介くん。
このまま全部なかったことにしてもう一度信介くんだけを愛せたらどんなにラクだろうか。
「俺を愛して⋯⋯。」
『⋯』
「困らせたいわけちゃうけど、こんなに好きな人がそばにおるのに手放すなんて俺にはできん。」
『悪いのは私やから⋯私でええなら信介くんの言う通りにする。そばにおるよ。』
「で、ちゃうよ。がええ。」
どうしたって私はこの人から離れられへん。私の心も体もとっくに彼のものやって会う度に思い知らされる。