第10章 約束 ( 北信介 )
言った通り素直に俺の上に跨って座っているの腰に腕を回して綺麗な顔を見上げる。目が合った彼女は照れたように視線を逸らしてもう一度俺を見た。
「今何考えとる?」
『⋯信介くん今日もかっこええな⋯って。』
好きな人にそんなん言われたら浮かれてまうなぁ。やけどまだ乾ききってない髪と緊張したような表情が気になってしゃあない。
俺に隠し事なんてできんよ。
そうやなぁ、例えば⋯
「教えてや。侑と何しとったん?」
抱いている小さな体に一瞬力が入る。嫌な予感ほどよく当たるもんや。隠し事のできない素直な彼女の瞳が次第に潤んでいく。
『ごめ⋯ごめん、なさい⋯』
「俺より侑が好き?の部屋に侑あげたん?俺には言われへんことしてたん?」
畳みかけるように問いかけるとぽつりぽつりと涙を零す大きな瞳。
『雨が降ってたから⋯宮くん傘なかったしやむまで私の家おってええよって私が言った。』
唇を噛んで涙を堪えながらごめんと繰り返して俺の着ているトレーナーをきゅっと掴む。
「唇噛んだらあかんよ。こっち見て」
頬に手を添えて視線を合わせ唇を重ねる。こうなるかもしれへんと心のどこかでずっと分かっとった。せやけどはずっと俺のそばにおって欲しい。
『⋯っん、な、んで⋯キスするの⋯っ』
「好きやからに決まっとる。頭ん中から侑追い出したろ思って。」
『あのね信介くん。
私⋯宮くんとキスした⋯。』
「⋯え?」
鈍器で頭を叩かれたみたいな衝撃がした。侑とがキス⋯?
『だから、もう私とは⋯』
「離さんよ。」
『⋯でも』
「俺と別れて侑んとこ行くん?」
行かんといて。お願いやから。
『行かんよ。こんなフラフラしとる私は信介くんとも宮くんとも一緒にはおられへん。』
「⋯それでも俺はを離せへんよ。侑を選んだとしても俺はと別れてあげられへん。」
『信介くん⋯』
「めっちゃ好きやで。」
どうしたら俺の腕の中におってくれる?
侑によそ見してもええから⋯俺から離れるなんて言わんといて。一生そばにおるって約束したやん。