第10章 約束 ( 北信介 )
今までの人生最短記録でお風呂に入って、髪を乾かして、変なところがないかチェックして信介くんの家に向かう。
『ご、ごめんお待たせ信介くん!』
彼の部屋の扉を勢いよく開くとストレッチ中の信介くんがおった。
「やっと来た。ご飯たべよか?」
『信介くんもまだ食べとらんの⋯?』
「一緒に食べたいに決まっとるやろ。」
『ごめんね。ありがとう。』
気にせんでええ、と私の頭を撫でてくれる信介くん。やっぱりこの人の手は安心する。ずっとそばにおりたい⋯それは本当に思ってる。
信介くんのおばあちゃんがご飯を用意してくれていて、2人で並んでいただきますをする。
「2人はほんまに仲良しやねぇ」
「俺たち付き合うてんねん。」
「そうやろなぁ、とは思っとったけど信ちゃんから聞くとほんま嬉しいなぁ。ちゃんがお嫁さんに来てくれたら安心やわ。」
「せやなぁ、俺はしか考えられへんからお嫁さんはもちろんやろな。」
「楽しみやねぇ」
目の前で結婚の話をされるのは心臓に悪い。さっきまで宮くんとおったなんて言われへん⋯。
食事を終えて、部屋に戻ってくるなり信介くんが自分の膝をポンポンと叩く。上に座れいうことやろか?
『お邪魔⋯します。』
「って子供体温であったかい。」
『そうかな?』
「うん、昔から思っとった。」
信介くんの上に向かい合って座ると距離が近すぎて顔を見れない。いつ見てもほんま綺麗な顔。かっこええな⋯。
「今何考えとる?」
『⋯信介くん今日もかっこええな⋯って。』
「ふはっ、なんやそれ笑」
『毎日思っとる⋯よ?』
「そうだったん?知らんかったわ。こんなべっぴんな彼女に言われたら嬉しいなぁ。」
私の輪郭を縁取るように信介くんが指を滑らせる。くすぐったいけど吸い込まれるような瞳から目を逸らせない。
『信介くんくすぐったい⋯』
「なあ、なんでこんな遅かったん?」
『⋯え、』
「いつもやったら雨降ってても来るやろ?そんなん気にする距離ちゃうし髪もまだ少し湿っとるよ。乾かす時間ならあったはずや。」
全てを見透かしているようで上手く言葉がでてけえへん。
「教えてや。侑と何しとったん?」
なんで⋯バレとるんや。