第10章 約束 ( 北信介 )
さんの口からでてくる言葉が信じられんくて何度も頭の中で巻き戻しては再生してを繰り返す。
『な⋯なんか言ってや。』
「あ、いや⋯そんなん言ってくれると思っとらんかったから⋯めっちゃ驚いて⋯。」
『もう⋯雨やんだから今日は解散しよか。』
窓の外を見るとあんなに降っていたはずの雨はあがってた。早く行かんときっと北さんがお迎えに来てまうから、俺はその前に帰った方がええ。
「あ、制服⋯」
『まだ乾いてへんと思うから嫌やなかったらそれ着て帰り。』
きっとさんがショッピングしたときに貰ったであろうショッパーに俺の制服を入れて持たせてくれた。
「お風呂と着替えまで貸してもらってほんまありがとうございました!また連絡しますね。」
『雨降ってたし気にせんでええから。』
玄関まで見送りに来てくれたさんと離れるのが寂しくて、少しでも⋯と会話を引き伸ばす。
「さっき言ってくれたこと嘘じゃないですよね」
『嘘であんなこと言わんよ。もう⋯はよ帰り。』
「夢みたいや⋯嬉しくてどうにかなってまう。」
『恥ずかしいからもう言わんでよ⋯』
視線を逸らして少し紅くなる彼女が愛おしくて仕方ない。
「なんで?俺ほんまに嬉しいです。さんのこと大好きやから!」
『わ、わかったから!もうばいばいっ』
半ば強引にぐいぐいと背中を押されて強制退場。これから北さんと会うさんにどうしても俺の事を考えていて欲しくて、振り向いて唇を重ねる。
『⋯⋯っん、』
「さんの唇ちょー柔らか。」
『ば⋯ばかっ!』
「怒ってても可愛ええ。
ほな、また明日学校で!」
『⋯ん。またね。』
またね、と小さく手を振るさん。ほんまはこのまま抱きしめてもっかいキスしたいくらいやけど、キリがないから今日のところは帰ろか。
北さんの家の前を通るんは緊張するけど、一応北さんがおらんか確認して⋯よしおらん。バレてさんが責められるんは嫌やから⋯今はまだ隠れとらんとな。
帰ったらサムに話きいてもらお!!