第10章 約束 ( 北信介 )
だんだんと弱まる雨の音。
目の前にいる宮くんは今まで見た事のない表情をしている。超えては行けなかった一線を超えてしまった。
~♪~♪
「さん携帯なってますよ」
『ほんまや…あ、』
信介くんからや。
宮くんが家におるってバレたくない。
「もしかして北さんからですか?」
『遅いから電話がかけてきたんやなきっと。
ごめん、ちょっと出るね』
「……」
『もしもし信介くん』
《もしもし。雨降っとるけど迎え行こか?》
『もうすぐ止みそうやから平気やで。
雨やんだらすぐ行くから待っとって。』
《はよ会いたい。》
『ほんまにすぐ行くから。
⋯またあとでね』
ほんまは雨が降ってたって関係の無い距離にある信介くんの家。ただの言い訳や。こんなことになってもまだ宮くんもおりたいと思っとる。信介くんに会いたくないわけちゃうくて、ただ宮くんともう少しだけおりたい。
「北さんでもあんなこと言うんですね。」
『え?』
「はよ会いたい⋯とか。」
『あ、うん⋯そやね。思ってることとかはわりと伝えてくれるタイプやと思うよ。』
「さんも言わはるんですか?」
『私はたまに⋯かな。恥ずかしくて。』
「俺やって毎日伝えますよ。好き。会いたい。抱きしめたい。キスしたい⋯俺やってさんが欲しい。」
ひとつひとつの言葉に心臓が跳ねてしまう。
『そんなん言わんで⋯よ。』
「困らせたいわけちゃうとか思っとったけどさ、困ってよ。俺で困ってさん。そんで俺の事で頭いっぱいになったらええよ。」
『⋯っもうなっとる。』
「え⋯?」
『もうなっとるから信介くんのところに行けないんよ。ほんまは雨が降ってようがすぐに信介くんの家行くし、こんな距離に宮くんをいれたりせん。』
だって仕方ないやん。
もう私一人じゃ抱えきれんかった。
吐き出す相手が本人しかおらんからこうなってしもうたけど、認めるしか無いんよ。私は宮くんのことも好きになってる。信介くんと同じくらいに宮くんが好き。