第10章 約束 ( 北信介 )
信介くんに話してみたけどダメやった。
明日になったら宮くんにもう一度話そう。
やっぱり私には信介くんがおるからって。
結婚…か。
確かにしたその約束は私もよく覚えている。小さな頃に行ったお祭りの屋台で信介くんがおもちゃの指輪を買って私の左手の薬指にはめてくれた。今だって大切にしてる。アクセサリーケースにしまってある。
信介くんまで覚えてたなんて驚いたけど、夏に行ったお祭りの屋台にあの時と同じ指輪が売っていて、それを嬉しそうに懐かしそうに眺めてた。覚えてるかって私に聞いた信介くん。忘れるわけないよ。私は今まで信介くんしか見てなかったんやから。
〜♪
メール…宮くんや。
《さんあのあと大丈夫でしたか?北さんと話したんですか?なんかあったらいつでも駆けつけるんで連絡してください!大好きです!》
真っ直ぐで元気いっぱいな文面。
《話はできたよ。心配してくれてありがとう。》
それだけを返して眠りについた。
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次の日の部活終わり。宮くんにメールをいれて帰る約束をしていた私は校門で彼を待っていた。
「?帰らんの?」
『あ、信介くん。
宮くんに話したいことあるから待っとる。』
「そうなんや。侑今日鍵当番やからそろそろ出てくると思うで。」
『わかった、ありがとう信介くん。』
「今日おばさんたち家におらんのやろ?帰ったらうちで一緒に夕飯たべよや。そのあと部屋でまた話そ。」
『うん、寝る準備したらすぐ行くね』
「ありがとう、じゃあ待ってるわ」
やっぱり別れようって言われるかな…。自分から言い出したのに寂しいなんて思ったらいけないよね。ホンマに小さい頃からずっと信介しか見てなかったからなぁ。
「さんごめんお待たせ!」
『お疲れ様、鍵当番やったんやろ?』
「せやねん、誰から聞いたん?」
『さっき信介くんに会って教えてもろた』
「そ、うなんや…あ、ねえさん。今日は送って行ってもええ?」
信介くんの名前を出されて戸惑っていたかと思えば送りのお誘い。
『…ええけど疲れてるやろ』
「ええの!?よっしゃ!疲れ吹き飛んだ!」
相変わらず元気な子やな…宮くんがええならええわ。