第10章 約束 ( 北信介 )
ガタンガタンと揺れる度に宮くんとの距離がゼロになる。彼の鼓動を聞きながら俯いたまま顔を見れない。
「苦しくないですか?」
『あ、うん平気…ありがとう』
「よかったです。さんの事は俺がお守りします!」
見なくてもわかる。きっと二力ーって太陽みたいな笑顔しとるんやろな。信介くんみたいに落ち着いてへんし、私のことをよく理解してくれてるわけでもない。真反対な彼のことを考えてしまうんはなんでやろか。
《まもなく〜○○〜○○駅です》
『ほな、私降りるね』
宮くんからするりと抜けて電車を降りる。冷えた空気が体の熱を奪っていく。
『…っさむ。』
「もー少しで秋も終わりやなあ」
『え?え、なんで降りたん!?』
当たり前のように電車をおりて隣に立っとるのは紛れもなく宮くんや。次の駅で降りて折り返した方がはやく帰れるんになんで!?
「なんでって…一緒におりたいんですもん。」
『学校で会えるやろ?』
「学校じゃ足りひん…ほんとは独り占めしたい。」
俯いてしまった宮くんを覗き込もうと近づくとホームに入ってきた電車から信介くんが降りてくるんが見えた。
『…っ宮くんこっち来て』
「え、あ…っ」
咄嗟に宮くんの手を引いて駅から離れる。
とりあえず信介くんに見つかったらあかん。悲しませてしまうから。家とは反対方向に走ってしばらくすると宮くんが立ち止まった。
「さん待って、急に走り出してどうしたん?」
『え、あ…ごめん』
「いや、家と反対やし…それに、手…っ」
『っつい…ごめんね。』
パッと手を離すと離れたそれを追いかけてもう一度宮くんの手が重なる。
『宮くん?』
「あ、いや…離したいわけちゃうくて。…俺は繋いでたいです。」
『その、信介くんがおって…だから咄嗟やったし今は離そう…よ』
「なんで北さんから逃げたん?咄嗟なら俺の事なんて振り切って北さんのとこ行くべきやった。こんなん勘違いしてまうよさん。」
宮くんの言う通りや。あの時私は信介くんのもとへ行くべきだった。どっちにしろ宮くんの手を引いて逃げるべきじゃなかった。
『ほんと…そうやね。何してるんやろ私。』