第10章 約束 ( 北信介 )
幽霊事件の日から宮くんは以前のように絡んでくるようになった。メールも毎日くるようになった。
「さーん!!メール読みました?俺が昨日の夜送ったメール!返信してくれへんのー?」
『連絡先交換したときに返信は期待せんといてって言うたやろ。読んだけど寝てしもうて返せへんかっただけや。』
「ふーん、ほんなら俺からの愛の告白を最後に読んで寝たっていうことやんな?」
『宮くん!ほんま声大きい!』
「さん好きーっ!」
『ほんで普通に隣歩いとるけど、もう一緒に帰らへんて言うたやろ…?信介くんに怒られるで宮くん。』
最近また宮くんが話しかけてくれるようになって、信介くんが気がついてないわけもなく…身体を重ねる度、口癖のように「どこへも行かんといて」と言う。
人一倍私に対して敏感な信介くんやから、離れたと思っとった宮くんの気持ちにもずっと気づいてたはずや。
「さんが北さんの彼女やったら俺の気持ちは消えるんですか?」
『そんなの知らな 「知ってるやろ」
「諦め方知らんねん、大好きですさん。」
『…』
そんなに真剣な顔で言われたらなんて返せばええのよ。気にしないように、と意識するほど宮くんが頭から離れへん。
「さん」
『なーに、もう駅やからそろそろ 「大好き」
『だから分かっとるって…っ』
「ほんまに分かっとります?」
いつもは改札に入ったら別々のホームにわかれるのに、私の手を掴んだ宮くんはなぜか私の家の方面へと向かう電車に乗りこんだ。
『ちょ、ちょっと宮くんの電車は…っ』
「もっと一緒におりたい。だめですか?」
『私には信介くんがおるから…だから』
「やだ。俺のことも見てよさん。」
帰宅ラッシュの時間帯、車両内はサラリーマンで溢れかえっとる。潰れへんようにと扉と宮くんの隙間に私を入れてくれた。壁ドンみたいやし…めっちゃ近い。耳に触れるほど近くで話す宮くんに体がピクリと反応してしまうのはなんでや。