第10章 約束 ( 北信介 )
俺の腕の中に大人しく収まるさん。また逃げようとするから強引に引き寄せたんやけど、やっと目を見てくれて内心はめっちゃ嬉しい…。
インハイの準決の日を最後に全く会話をしてへんし、ずっと避けられとったから話す機会もあらへんかった。
サムとさんが並んで校内入ってくから思わず追いかけて来てしもうたけどサムおらんし、さんはサムと間違えて俺に飛び込んでくるしなんなんホンマに。
俺を避けに避け続けたさん。逆に意識してるんちゃうかってポジティブに考えることにしててん。ちょっと冗談のつもりで言ったんにさん固まってしもうた。
…もう一押しか?
「避け続けたら俺が諦めると思ったん?」
『…』
え…図星?もういっちょ押しとくか?
「俺さんのこと諦められへんよ。諦め方分からへんって言うたの覚えとります?」
『お…覚えとる。』
あ、喋ってくれた。
「逃げられると余計追いかけたくなる。嫌われるん怖くて近づけへんかったけど…。」
『うん…』
「また追いかけてもええですか?」
『えっと…』
「前みたいに話しかけたいしメールも送りたい。俺は今もさんのことめっちゃ好きやで。」
『ま、待ってや宮くん。私には信介くんがおるから…ほんまに応えられへんよ。』
「そんなん分からんやん。」
『…なんで…?』
「だってさんの心臓俺と同じくらいドクドク言うてるもん。」
小さな体からトクトクと脈打つ鼓動が俺にもよう伝わってくる。
『そ、それは暗くて…ちょっと怖い、から』
「俺はさんが好きで心臓ドクドクなっとるよ。分かりますか?」
彼女を抱きしめている腕に更に力を込めて隙間なく抱き寄せる。バッと顔を上げたさんの顔は耳まで紅く染まっとるように見えて。
「そんな顔されたら期待してまうよ。」
男なんて好きな人相手やとIQ2やねん。
なんでもかんでも期待して期待して期待して…彼氏おっても振り向かせたもん勝ちやろとか思ってまうねん。