第10章 約束 ( 北信介 )
「北さん!女テニの人が呼んどります!」
「すぐ行くって伝えてくれるか?」
部活が終わり、もう帰り始めているヤツもいる中、出ていったはずの1年の理石が戻ってきて北さんに声をかける。なにやらテニス部の女子が呼んどるらしい。
きっとさんやな。
一緒に帰るんかな。ええな…。
「…侑大丈夫?」
「あ、あー…まあ平気や。
分かりきってたことやし…俺たちも帰ろ!」
ほんとは平気ちゃうけどな…無理にでも明るくせんと心折れそうやねん。角名にはきっとバレとるけど。
部室を出ると、体育館の前でラケットバックを背負った人と北さんさんがなにやら話しとる。あのバックさんのちゃうな。誰やろ。
「ねえ北さんと一緒にいるの侑のクラスの子じゃない?」
「ほんまや…え、しかも告白ちゃう?」
「ほんとだ。さんと部活一緒なのに付き合ってるの知らないのかな。でもまああの先輩自分から言わなそうだもんね。」
「さんは?もう帰ったんかな?」
もしさんが見たら…また前みたいに体調悪くなってまうかも。
「あ、いた…さんっ」
『わ…宮くんや。』
「あ、もう帰りですか?」
『そうやけど…?』
「え、駅まで…ええですか!」
『信介くんはもう帰ったんかな?』
「…ど、どうやろな。でも俺たちより先に部室でていきましたよ!」
嘘はついてへん。
呼び出されて出てっただけやけど…!
『そっか。じゃあ私も帰ろっと。』
ふぅ…告白現場バレずに済んだ。
ほんま俺に感謝してほしいで北さん…っ
「だ、だいぶ暖かくなってきましたね!
もうすぐ夏やなー!なんて…?」
『どうしたん宮くん?
まあ確かに最近暑いけど…』
やばい不自然や俺…っ!
隠すのに必死で会話思いつかへん!
普通の会話…なんか話題…あ、!
「さんと夏祭り一緒に行きたいなあ」
『…治くんと角名くんと行かへんの』
「好きな人と過ごす夏憧れますやん」
『…っそ、うやね。』
何の間や今の。
さんは北さんと行くんやろな。
もしかしたら毎年一緒に行ってるんかも。