第10章 約束 ( 北信介 )
『ほんまに宮くんは諦め悪いなあ…笑』
だから私は笑って誤魔化すことしかできない。
「いつか振り向いてくれるかもしれないやん。」
私の背中を擦りながら真剣に言う宮くんから視線を外せない。トクトクと鼓動の音がうるさい。
『も…もう平気。ありがとう宮くん。』
「良かった。家まで送ってもええ?今日は北さんおらんし…なんて言うたら怒られます?笑」
『えっと…ひとりで帰る。ごめん。』
「…そうですよね。駅までもあかん?」
『それなら…ええけど。』
どうせ駅までは道一緒やし。
私の手から荷物を攫った宮くんの後をついていく。
「さん髪ずっと長いん?」
『え?』
「ロングのイメージめっちゃあるから!」
『そうやね、ずっと長いかもしれん』
「さん顔がええからどんな髪型も似合うんやろな。ボブとか想像しただけでニヤけてまうわ。」
『ショートが好きなん?』
「いや、そんなことないけどさんのショート見てみたいなってそれだけです。きっと全部可愛いやろから。」
『そ…っか。』
振り返ってニカッと笑う彼が眩しい。
どんなに境界線を引いても追いかけてくる。気づいたら隣におるような子。ほんま調子狂うねんな。
「じゃあ、またねさん。
ほんまはもっと一緒におりたいけど。」
『…またね。荷物ありがとう』
宮くんの手からスクールバッグを受け取って別々のホームに向かう。振り返るとまだそこに宮くんがいて、私に気がつくとニコニコと手を振っている。
軽く手を振り返すとほんまに嬉しそうに笑うから、また心臓がザワザワした。なんやこれ…。