第10章 約束 ( 北信介 )
あー…お腹痛い。生理かな…。
確かにそろそろだよなあ。
テニスコートの整備があるらしく今日はイレギュラーなoff。体育館も点検言うてたけど信介くんは尾白くんたちと出かけるらしい。
誰もいない教室からグラウンドを眺める。
陸上部や。足はやぁ…。
『お腹痛いなぁ…。』
治まったら帰ろ。
「さん!!」
『…え?宮くん?』
息を切らした宮くんが勢いよく扉を開けた。
「さん大丈夫?
どっか痛いん?具合悪い?」
『え、待って待って…なんでここおるん?』
「帰ろ思うてもう外おったんやけど、下からさんのクラス見たら机に伏せてるの見えて…。」
『寝てるかもしれんやん』
「それならそれでええですけど。
なんかそんな感じじゃなかったから。」
確かに荷物全部持っとるし…本当に帰るとこやったんやろな。
『優しいね宮くん』
「さんにだけやで。
そんなことより、どっか具合悪いん?」
またサラっとそんなこと言うて…。
『ちょっとお腹痛くて…でも生理やろから。
波が治まったら帰ろ思ってたんよ。』
「あ、せ…いり。男兄弟やから分からへんけど辛いって母ちゃんが言うてた…。薬とか持ってるんですか?」
『ううん…少ししたら大丈夫やから。』
隣の席の椅子を引いて腰掛けた宮くんが私の背中をさする。じわじわとあたたくて痛みが引いていく感じがする。
「何したらいいか分からんくて…こんなんじゃ変わらんかもしれんけど。」
『ありがと。ちょっとラクになってきた…。』
「ほんまに?良かった…。」
『ねぇ、宮くんはなんで…こんなに追いかけてくれるの。私が信介くんのことずっと好きやったの知ってるのに。』
「そんなん、好きやから一択ですよ。
こんな好きになった人おらんから俺もよう分からへんけど、振り向いてくれなくても諦め方知らんから。」
『そっか。かっこいいね。』
関係が壊れることを怖がってた私とは大違いや。もっと早く信介くんに好きって言えてればモヤモヤすることもなかったのに。
「全然かっこよくないですよ。めっちゃフラれとるし。北さんと真反対やし…でもさんのこと好きな気持ち全然消えてくれへんから。今も走ってきてもうたし…諦め悪いだけです。」
なんで宮くんの言葉に胸がザワザワするんやろ。