第10章 約束 ( 北信介 )
「めっちゃ美味しかったです。すんません、さんのお弁当取っちゃって。」
『ううん、美味しそうに食べてくれて嬉しいよ』
「さん俺の弁当で大丈夫でした?」
『うん、美味しかったで!ありがとう』
夢みたいや…さんの手作り弁当を食べれるなんて。なんで北さんの彼女なんやろ。早く俺に振り向いてくれへんかな。
『あと少しでチャイム鳴るね。
宮くんレジャーシートありがとう。
そろそろ戻ろっか?』
シートを畳んで俺に手渡すさん。時間過ぎるんあっという間やったなぁ。
「あーあ、せめて同じ学年が良かったなあ」
『何言うてんのもー』
「だって学年ちゃうとフロアもちゃうし…
全然会われへんですやん。」
『宮くん全然気持ち隠さへんのやね』
「もうバレてるからえーの。
ほんまにめっちゃ好きさん。」
呆れたように屋上を出る先輩の後ろをついていく。俺がこんなに好き好き言うてなびかへんのさんだけやできっと。なんて思ってまうくらいに俺はモテんねんけどなー。
「さん可愛ええ」
『ありがとう』
「さん綺麗」
『ありがとう』
「さん好き」
『ありがとう』
「だーいすき」
『宮くん』
「はい」
ありがとう、と俺をあしらう先輩が立ち止まって振り返る。
『私応えられへんよ』
「好きです」
『だから私は信介くんの 「分かってる。」』
そんなん分かってる。だけど諦められへんからこんなに追いかけてるんやん。
「さんのことどうやって諦めたらええんか分からんねん。前にも言うたけど俺には応援とかできんよ…。」
『それは分かっとるけど…「好き。」』
『…っわ、分かったって』
「ちょっと顔紅いで。期待してまうやん」
『もう…教室もどりな宮くん』
「せやな、またねさん」
教室へ戻る途中もさんの事ばっか考えてる。
視線を外したさんが頬を少し染めたようにみえた。見間違いだとしても、勘違いしてまうやん。もしかしたらって期待してまう。
「あー…めっちゃ好きや…。」