第10章 約束 ( 北信介 )
「さん!お昼一緒にたべよう!」
バタバタと騒がしい足音。ガラッと勢いよく空いた扉から現れたのは宮くん。
『…あれ、えっと』
「だめ?」
『いや、私信介くんと付き合うとるって…』
「知ってて会いに来てますよ」
「何してんねん侑」
「き、北さん…っ」
『信介くん』
朝のことを思い出すとやばい気がしてきた。
「部長会議あるからとお昼食われへんけど俺の彼女ってこと忘れたあかんで侑。」
「う、はい…っ。」
あれ、意外とあっさりや。すれ違いざまにふわりと私の頭を撫でて行ってしまった。
『お許しでたしお昼一緒に食べよか?』
「屋上でもええですか?」
『どこでもええよ』
信介くんよりも背の高い大きな背中に付いて屋上へつくと、小さなレジャーシートを広げる宮くん。
「はい、ここ座ってさん」
『これ持ってきたん?』
「さんの制服汚れてまうから。
でも天気ええし屋上で食べたくて。」
『そっか、ありがとう宮くん』
こんな気遣いとかする子なんやな。
なんか新しい一面や。
「さんのお弁当うまそー」
『ほんま?今日は私が作ったから嬉しいなぁ』
「え!さん料理できるん!?」
『凝ったもんとかは作れんよ。
お弁当くらいなら食べるの自分だけやし』
「卵焼きめっちゃ美味しそうやあ」
『食べる?』
キラキラとした瞳で私のお弁当を覗き込む宮くん。卵焼きの1つくらいあげよーかな。
「え、食べたいです!」
お弁当箱を差し出すと、伸びてきた箸が卵焼きを掴む。
「やばいめっちゃ美味い…っ」
『大袈裟や、でもありがとう』
「大袈裟ちゃいますって、ホンマに美味しいです。俺の弁当と交換してほしいくらいやわ。」
ニカッと笑う宮くんの手元にあるお弁当は私のお弁当の倍ほどある。とてもじゃないけど私のじゃ足りないと思う。
『私のじゃ足りひんやろ。これ全部あげるから宮くんの少し貰ってええ?お母さんに怒られへん?』
「怒られへんです!やった!!!」
お弁当1つでこんな嬉しそうにしてくれるんや。
なんかほんまに大型犬に見えてきた。