第10章 約束 ( 北信介 )
宮くんとのお出かけ思ったより楽しかったなぁ。海も久々行けたし、素敵なカフェも見つけられたし。
お風呂から上がって、自室のベットに寝転がる。窓辺に並んだ信介くんとの写真。私ってば幸せそうに写っとるわ。
握った手も抱き寄せられた腕も私を包む大きな体も…全部信介くんとは違う。彼なりの真っ直ぐな想いが痛いほどに伝わってくる。
このままじゃいけない。
宮くんを期待させるだけさせといて、
やっぱ信介くんしか見れないなんて失礼や。
「、入んで。」
『…っ!?』
私の返事を待たずに開いた扉の向こうに立っていたのは、信介くん。あっちもお風呂後やろか…髪が半乾きや。
「すまんな急に」
『それは全然ええけど…どうしたん』
「なぁ約束してた友達って侑やったん?」
『え…?』
「侑が駅の方歩いてくんが俺の部屋から見えたんよ。こっちにある用事なんてくらいしか思い浮かばへんのやけど違ったか?」
いつもより少し低い声に体が強ばる。
『え…っとな信介くん』
「ええよ別に…付き合うとるんなら隠さんで欲しかっただけや。」
『付き合うてへんよ』
信介くんにだけはバレたくなかった。
勘違いされたくなかった。
私が好きなんは信介くんだけや。
「は付き合うてへんけど自分に好意がある男と2人ででかけたりするんや。」
『ちょっと信介くん言い方…』
「だってそうやろ。
侑の気持ち弄んでるん?」
『ねえちょっと…』
「なんで泣きそうな顔しとるん。
泣きそうなのは侑やろ、遊ばれとるんやから」
なんでこんな言い方するの。
正論いうより棘があんねん。
『なんでそんなに…怒ってるんよ…?』
零れそうになる涙を必死に堪えながら信介くんの目をじっと見る。言葉とは裏腹に悲しそうな表情をしている信介くんは何を考えているんか分からへん。
「怒ってるんちゃうよ。」
『怒ってるやん…』
「ちゃうくて俺は…」