第10章 約束 ( 北信介 )
「これ食べたら海見に行きません?」
『そうしよか』
どうしたら俺を意識してくれるやろうか。
どうしたらその瞳に俺を映してくれるやろうか。
『ここのカフェはケーキも紅茶も美味しいね。宮くん誰に教えてもらったん?』
「最初はサムに教えて貰って、クラスの女子も話しとったし美味しいんやろなーとは思っとりました。」
『へー、治くんが?カフェ好きなん?』
「いや、あいつ食べることが好きなんですよ。
食うかバレーしとるか寝とります。」
『あははっ、なんかちょっと想像つくかも笑』
やっと興味を持ってくれたと思ったらサムの話題。しかもサムだけ名前呼び。こんな悲しいことあらへんで…。
「さん俺の事も名前で 『食べおわった!よし、宮くん海行こう!』」
「あ…はいっ」
一線引いとるんやろなって分かる。
俺の気持ちには応えてあげられへんから、北さんしか見えてへんから、だからこれ以上は距離を詰めてこんでって。言われんでも分かる。けど好きって止められへんから…どうしたら俺を見てくれるかってそればっか考えてんねん。
諦めの悪いしつこい後輩やけど好きやねん。
北さんしか見えとらんかったとしても
もしかしたらって思ってまうねん。
お詫びやいうて2人きりで出かけてくれるくらいには縮まった距離を、このまま平行線なんて嫌や。
『宮くん考え事ですか?』
「あ、え…っと」
『なーに?』
「すんません、さんのこと考えとって。」
『私の事?隣におるんに?』
「どうしたら俺に惚れてくれるんかなって」
『もう宮く 「俺の頭ん中さんばっかやねん。
やからさんも俺の事ばっか考えてくれたらええのにって思ってました。」
『そんな真っ直ぐ言われたら照れるやん』
「照れとるさん可愛いです。」
今は誤魔化されたっていい。
きっとストレートに何回も伝えた方がええんよ。
そうでもせんとさんはきっと逃げてまう。ここまでしか来たらあかんよって知らん間に線を引かれてまうから。