第10章 約束 ( 北信介 )
俺の言ったわがままを結局全部聞いてくれたさんは、あれからとくに上の空といった様子もなく、海浜公園のカフェに到着した。
「さん何食べます?
外の看板にかいてあったケーキにします?
ベリーなんちゃかタルトやっけ」
『うーん、そうやね。
せっかくやしそうしようかな。宮くんは?』
「俺はこれやな!チーズケーキ!
あと飲みもん…さんどうする?」
『私はアイスティーにする』
「じゃあ俺もアイスティー」
まずはさんの好きな食べ物調査や!飲みもんはアイスティーが好き、っと。ケーキが食べれるっちゅーことは甘いもんも好きやな!
運ばれてきたケーキに目を輝かせるさん。でもそれを口に出したりはせずにただ嬉しそうにケーキを眺めとる。
思わず携帯のカメラを彼女に向けてパシャリとシャッターを切った。
『…っ撮った?』
「すんません可愛くて…つい。」
『私絶対変な顔しとった!』
「めちゃくちゃ可愛い顔ならしとりましたよ」
『も…もう、食べよっ?』
消せ言われる思ったけど…なんやその可愛い反応。北さんのことしか見てないって分かってても諦めつかへん。
「さんの美味しそうですね!」
頬をほんのり染めて俯いてしまった彼女の瞳に俺を映してほしくて声をかけてみる。
『食べる?』
「へ…?」
彼女の口から出た言葉が予想外すぎて俺は今相当間抜けな顔をしとると思う。
『美味しいで、宮くんも食べてや』
「あ、え、え、ええんですか」
『ははっもちろんや、はいどーぞ』
すっと目の前に差し出されたさんの食べかけのケーキ。どう食べようか迷っとったら、俺の手からフォークをとって自分のケーキをのせてから戻される。
『食べへんの?ベリー嫌いやった?』
「あ、いやっ、ちゃうくて…っ
ありがとうございます、いただきます…!」
正直味なんてよう分からへん。ただいちごの甘酸っぱさだけが口の中に拡がってく。
「チーズケーキ食べます?」
『ありがと、もらおうかな。』
躊躇いもなく俺の食べかけたケーキの続きにフォークを入れた。あかん、俺ばっかドキドキしとる。惚れさせたる言うといてこんなん…ダサすぎやろ!!いやでもこんなんドキドキ不可避や!