第10章 約束 ( 北信介 )
少し遠くから誰かの走る足音が聞こえる。もしかして、もしかしなくても宮くんな気がするなぁ。
「さーんっ!!」
バン!っと勢いよく開かれた扉。
「呼ばれてんで」
ドア付近の席に座るクラスメイトが宮くんのあまりの勢いに半笑いで私に声をかける。
「あー!この前の!!俺のチャンス掻っ攫ってったバレー部の宮くんや!!」
「別に掻っ攫ってないですやん!
さんが俺を選んだだけの話や!」
「いーや掻っ攫った!宮くんおらんかったら俺はと一緒に帰れたんに!」
『宮くんがおらんでも一緒に帰ってへんし、宮くんも声大きいねん。恥ずかしいからはよ帰んで。』
「はい!!」
「え、あっ宮くんまたと!?」
その返事も声大きすぎんねんて…。
私の隣をぴったりと着いて歩く宮くん。
心做しかブンブンと大きく振るしっぽが見える。
「どこか行きたいとこあります?」
『特になんも考えとらんかったなぁ。
宮くんはどっか行きたいとこあるん?』
だって今朝気づいたんやもん。
「俺はさんのOFF貰えただけで正直めちゃくちゃ満足というか…でもわがまま言ってもええなら聞いてくれます?」
『ええよ、お詫びとお礼やし。』
「海浜公園の方におしゃれなカフェがあるらしくて、そこ行きませんか?海も見えるしどーかなって。」
『海浜公園かぁ、いいね。行こうか。』
小さい頃、お母さんたちに連れられてよく信介くんと行ったっけ。懐かしいな。また一緒に行きたいな。
「さん?
もしかして北さんのこと考えとった?」
『え…?』
「あ、いや…俺も無意識にさんのこと考えたりするんで俺がどうこう言えないんやけど…今日は俺の事考えて欲しいなって。」
『ご…めんね。そうだよね。
うん、今日は宮くんとおるんやしそうやね。』
今ここにいない信介くんのことを考えてたって仕方ない。それに信介くんには好きな子がおるんやし…私の事なんか考えとらんよね。今日は宮くんとめいいっぱい楽しもう。
「わがまま言ってすんません。」
『いいって、私こそごめんね。ほら行こ!』
うん、今日は楽しむって決めたんだから!