第10章 約束 ( 北信介 )
次の日の朝。
信介くんの腕の中で目が覚めた。
私…そっか昨日…怖かったとはいえすごく大胆なことをしてしまったのでは…?
「ん…、おはようさん。」
『お、おはよ…さん』
「俺より起きるん早いなんて珍しいな」
『なんか目が覚めちゃって…。
ほんとにずっと抱きしめてくれてたん?』
眠りに落ちた時と変わらぬ景色に本当に一晩中信介くんの腕の中にいたのかと思うと心臓が脈打つ。
「が頼んだんやろ?嫌やったん?」
『嫌とかちゃうくて…その…ありがとう。』
「気にせんでええよ。
なんでも頼ってや。」
『うん。』
期待してしまう。
信介くんの言葉に意味は無いのに。
幼馴染の私を大切にしてくれてるだけやのに。
「はよ準備して学校行こか。」
『そやね』
2人でベッドから抜けて支度をする。
あと何回信介くんとこうしてられるだろうか。
もし信介くんが好きな人と結ばれて…
そしたらもうお互いの家に泊まるなんてできなくなっちゃう。信介くんの好きな子って誰やろか。私の知ってる子やろか。苦しい。
「そや、今日部活OFFやんな?
久々どっか寄り道でもして帰るか?」
『うん今日はOFF…OFF?』
「俺らはOFFやけど、女テニもちゃうん?」
OFFだ。そうだ。
次のOFFはでかける約束を宮くんとしたんやった。昨日の今日やんか。すっかり忘れとった…。
『あ、えっと…っ
OFFなんやけど…友達と約束しとって!』
「なら仕方ないな。
また今度にしよか。」
『う…ん、ごめんね信介くん』
「なんで謝るんよ。
またいつでも出かけられるやろ。」
宮くんとでかけるのは何となく知られたくない。信介くんからお出かけに誘ってくれるなんて久しぶりだったんに…。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
気持ちは晴れないまま最後の授業を終えるチャイムが鳴った。それと同時にポケットの中の携帯が振動する。
《教室まで行くんで待っとってください!》
宮くんから送られてきたメールに
《了解です》
それだけ返して帰り支度を始める。