第10章 約束 ( 北信介 )
『校門からずっとつけられとったらしくて。私全然気が付かんかった。宮くんが気づいとらんかったら私今頃きっと…』
きゅっと俺のTシャツをさらに強く握る。その手はさっきよりも震えとって、悔しいけど侑に感謝せんといかんよな。
「もう大丈夫やで。
今ここにおるんは俺や。
安心して寝たらええ。」
『ん…ぅん。ありがと信介くん。』
「朝までこうしとるから安心せえ」
『絶対だよ…離さんとってね。』
「離さんよ。」
『ん、おやすみ信介くん…』
「おやすみ。」
浅い呼吸を繰り返して震えていた身体もしばらくすると規則正しい寝息に変わって、俺のシャツを握っとった手は甘えるように背中に回った。
こんなに近くにおって抱きしめ合ってても、俺たちは恋人同士ちゃう。の気持ちは分からへん。
が前に話しとった好きな人と侑は真逆のタイプやけど、もう侑以外思いつかへん。でもちゃうって言うとるしな。
あーー誰や。の好きな人…。
に聞かれた時は好きな人おらんなんて言ってもうたけど、俺にとってを好きな事は特別なこととちゃう。当たり前なことやねん。ガキの頃はもおんなじ気持ちやって思っとった。信じて疑わんかった。
俺には一生だけやねん。
そう心に決めとんねん。
やけど今になってこんなん重いんちゃうかってビビっとる。の好きと俺の好きはきっとちゃうから。
スースーと安心しきって眠るの頭を撫でながら俺も眠りに落ちた。