第10章 約束 ( 北信介 )
ふわりと香る優しい匂いで目が覚めた。
ベッドに横になっていた俺のそばにが腰かけて座っとって、不思議そうに俺を見とる。
俺がの部屋で帰ってくるん待っとるなんてあんまあらへんからかな。自分でもよう分からんねん。
湿っていた髪もが乾かしてくれたらしい。
泊まっていくことを伝えると驚いていたが、すぐに受け入れてくれた。
『信介くんお待たせ』
「おかえり。もう寝るか?」
『そうやね、明日も学校やし。』
「ほな電気消してベッド入ろか。」
お風呂上がりの彼女はゆるい格好に頬がほんのり染まっとって目に毒やねん。あんまり見ると変な気起こしそうになるからはよ電気消した方がええ。
電気が消されて真っ暗な部屋の中、2人で同じベッドに入る。
『あ…あの信介くん。』
「なんや、寝ないん?」
『寝るけど…いっこお願い聞いてくれへん?』
「ええよ、なに?」
俺に背中をむけとったがこちらを向いて俺のTシャツの胸元を両手できゅっと掴んだ。 その手は小さく震えとる。
『ほんま変なお願いで悪いんやけど、今日だけでええから…ぎゅってしててほしい…。』
なんや甘えたモードかいな、なんてドキっとしたけどそんなんちゃいそうやな。お願いと言って震える手。
「なんかあったん?震えとるよ。」
『な…なんも無いよ。
今日はそういう気分なだけや。』
「言いたくないならええけど。
なんか怖いことでもあったんか?」
『…ほんま隠し事できひんわ。』
「当たり前や。どんだけ一緒におると思ってるん。のこと1番知っとるのは俺や。」
そうや。を1番よく知ってるんは俺や。隠し事をするときも何となく分かんねん。話し方とかトーンとか…ずっと一緒におったんやから。
『さっき帰り道にな…』
震える声で話し始めた。つけてた男は俺と登校したときに校門まで来とったやつや言うし…を1人にさせられへんな。
「電話でもなんでもくれたら助けに行けたんに…すまんな。怖かったやろ。」
『怖かった…けど宮くんが助けてくれたから平気やったよ。』
「侑が?家の方向ちゃうやろ。」
ほんまに最近侑ばっかりやな。