第10章 約束 ( 北信介 )
『じゃあ、私こっちやからまたね』
「あ、また!」
『そうや宮くん、保健室の事と巻き込んでしもたお詫びしたいから何か考えといてや。』
「え、あ、はいっ」
お詫び何がええかな、飲み物とかでえーか。
それかお菓子とかでええやんな。あ、でもお菓子食べへんかな。スポーツマンやしなぁ。もうスポドリの粉とかでええか?
「おかえり」
『あ、信介くんただいま』
たった数日ぶりやけど久しぶりの会話。
考え事をしながら家までの道を歩いていると、ちょうど帰ってきていた信介くんに声をかけられた。告白されてたん見てしもうたから気まずいな。それにやっぱり苦しい。
「侑とおったん?」
見られてたんや…。
『クラスの人に絡まれて面倒やってん、グッドタイミングで宮くんが声掛けてくれたから私が巻き込んでしもうただけやで。』
「俺も声掛けよ思ったんやけど邪魔かと思ってん」
『え…?』
「もう侑に告白されたん?」
『あ、えっと…うん。』
今までそんなん聞いてきたことないやん。
「付き合うてんの?」
『断ったけど…どうしたん信介くん。』
「いや、なんでもあらへん…。
こんなこと聞いてすまんな。また明日。」
いつもより力のない声でまた明日、と言って家の中へと入っていく信介くんを見送ることしか出来なかった。なんとなく声をかけられなくて、私はしばらくその場でぼーっとしていた。