第10章 約束 ( 北信介 )
信介くんには好きな子がおって…。
信介くんのことを好きな人もおって。
私は信介くんが好きで。
いつか信介くんに彼女ができて、結婚して…そんなのきっとお祝いできないよ…。どうしたらええの。
「?」
『あ、え…なにしとるん』
「何って部活終わりやけど。
今帰り?一緒に帰ろや!」
『一緒には帰らへん』
同じクラス。隣の席の男の子。
例の何かと絡んできよる子や。
「なー俺のこと好きやんか?」
『そうなんや、知らんけども』
「あれ、ほんまに部活してきた?」
『してきたし、なんやねん話飛び飛びやで』
「いや、汗の匂い全然せーへんから。
むしろめっちゃええ匂い!!」
『嗅がんといて』
ちゃっかり隣歩いとるしほんまなんやねん。
こんなん信介くんに見られたないな。
「なあほんまめっちゃ可愛ええ。俺と付き合うてや?」
『顔しかみてへん人と付き合うわけないやろ。』
「なーんでそんな冷たいんよ?んまそういうとこも好きやねんけどな。強気でクールなとこが堪らんわ。」
潔いいまでに外見しか見とらんな。
『ほんまにしつこいで。
1人で帰るからもう構わんといてや。』
「俺とええペアや思うけどなあ。好きやで。俺の彼女なってや、な?」
『…っ1人にしてや』
「さん?」
『宮…くん?ちょ、ちょっと…来て!』
「は、はいっ」
ちょーーーどええとこにおるやん宮くん!
ごめやけど少し付き合って!
『宮くんと約束しとってん、ほなな。』
宮くんのブレザーの裾を掴み、戸惑う彼を引っ張って歩き出す。
「なっ、おい!
あーもう!また明日な!好きやでー!」
せめて早く席替えしたい…。
なんでアイツと席隣やねん。
「え、えと、さん…っ?あの人ええんですか?同じクラスの人ですよね?」
『毎日しつこいからええねん。
それよりすまんな、急に巻き込んでしもうて。』
「それは全然!むしろ巻き込んでください!」
『ははっ、宮くんはほんま面白いなあ』
「ああもう笑顔ほんま可愛ええです…っ」
宮くんからの好意は不思議と嫌じゃない。
きっと私を知ろうとしてくれてるからや。
気持ちには応えられへんけど仲良うなれたらええな。