第10章 約束 ( 北信介 )
「侑なにしとるん、チャイム鳴るで」
「っ北さん!教室移動…です!」
「そうか、サボったあかんで」
「っはい!」
なんでもお見通しやな北さん…こわぁ。
サボろ思って人の来おへんフロアに向かう途中、運悪く北さんに会うてもうた。それでもサボるんやけどな。北さんこそこんなとこで何しとったんやろか。
『……っはあ、はあ…っ』
なんやこの声…女の人?幽霊ちゃうよな!?
声のする方へ恐る恐る近づくと
「…っさん!?
何しとるんですかこんなとこで!」
『み、や…くん?』
苦しそうに浅い呼吸を繰り返すさんがうずくまっとった。
「え、どないしたんですか?」
『なんもないで…平気や…っ』
平気ちゃうやん…!どうしたんやほんまに!
とりあえず保健室や!こういう時は!
「すんません…触りますね…っ嫌やったらあとで殴ってください!」
嫌がられるのを承知でさんを抱き上げ、なるべく揺らさんように保健室へ急いだ。
やけど中には誰もおらんくて、その代わり机に張り紙みたいなんが置いてあった。とりあえず今日は保健の先生おらんちゅーことや。どないしよ。
『ごめ、ん…すぐ落ち着くから…』
いつになく弱っているさん。こんなときでさえ好きやなって思ってまう。そっとベッドにおろして気になったことを聞いてみた。
「あんなとこで何してたんですか?北さんとすれ違いましたけど…北さんとなんかありました?」
『…』
黙るってことはビンゴやん。
「北さんになんかされました?」
『ち、違う!違うから…っ信介くんには言わんといて。私があそこにおったことは…絶対言わんといてや…お願い。』
泣き出しそうな瞳に見つめられたら俺は頷くしかないねん。
「言わんですけど…北さんとは会うてないんですか?」
『会うてないよ。あそこ人あんま来おへんからプラプラしとってん。そこにたまたま信介くんがおっただけで…。』
「告白…されとったとか?」
『え…なんで知って…』
「あそこ告白スポットで有名ですやん。さんもあそこでされたことあるんちゃいますか」
確かに…と頷くさん。そんならこうなった理由なんて1つしかあらへんよな。
「えっと…北さんのこと好きなんですか?」