第10章 約束 ( 北信介 )
部活終わり、まだ体育館には電気がついている。信介くんのこと…待ってみようかな。約束もなしに待つなんて初めてだけど…。
「か?」
『…っ信介くん』
「何しとるん、誰か待っとるんか?」
『えと、あ…の、信介くんを。』
「俺のこと待っとったんか?」
『うん。一緒に帰りたくて…いいかな?』
「もちろんや、帰ろか。」
昨日はどうして怒らせてしまったのか分からない。でも今はなんてことない感じ。気のせいだったのならそれでいいんやけど。
「が約束もなしに待っとるんは初めてやな。なんかあったんか?」
『いや…うーん…。えっと。』
「なんや?」
『昨日…の夜うちに来たとき。すぐ帰ってしもうたから。なにか怒らせたんかと思って。』
「昨日…あぁ。別になんでもあらへんよ。気にさせてしもたんやったらすまんかったわ。」
『そっか。それなら良かった。』
それなら良かった…お昼休みのときも様子変やったし、このまま距離が出来てしもうたらどないしよ思っとった。
「あっさんや!さーん!
あ…き、北さんもおる!!」
『この声…。』
振り返ると最近よく見る顔が2人。
「お疲れ様ですさん」
『宮くんお疲れ様。
いつも治くんと一緒に帰っとるん?』
「まあ家一緒なんで」
「ぇえ!サムだけ名前呼び!?
ずるい!俺も侑って呼ばれたい!」
『宮くんって呼ぶつもりやったけど君ら双子やん。』
あとに出会ったんが治くんやからたまたまそうなっただけ。特に意味なんてあらへんけど。
「侑って呼ばれたいですーー!!」
『気が向いたら呼ぶね』
「う…はい。」
「全然相手にされてへんやんツム」
「うっさいねんサム!これからや!」
『それじゃあ私帰るね』
「あっはい!また学校で!
北さんもまた部活で」
「ほなな」
ほんまいつでもどこでも声掛けてきよる。
「やっぱり侑のこと気になっとるんちゃうの?」
隣を歩く信介くんが口を開いたと思ったら急に何を言うん。
『やっぱりってなに…?
そんなんとちゃうって言うたやん。』
「侑がに好意あるん見え見えやん。それやのに相手しとるからやっぱり珍しい思うてな。」
『そんなんとちゃうって。』