第10章 約束 ( 北信介 )
『はよ帰らんと体休まらんよ』
「ほんまに少しでええですから!」
『…分かったよ。』
宮くんとおると調子狂うねんな。
ペース持ってかれてまう。
「あの、さ…寒くないですか?」
『寒くないよ5月やで。』
ベンチに座って10分程が経つ。
さっきから宮くんはこんな調子。
「えと…北さんもう家着いてますかね」
『着いとるんとちゃう?
信介くん寄り道とかせえへんし。』
「…っさんと北さんてどういう関係…ですか?すごい気になってもうて…北さんが女の人とおるんあんま見いひんし。」
なんやそんなことが聞きたくて公園寄ったんか。
『信介くんはな、幼なじみやで。
ちっさい頃からずっと一緒に育ってん。』
「そうなんや、ええな…北さん。」
『え?』
「さん」
『うん?』
「気づいてると思いますけど、俺さんが好きです。全部ドンピシャタイプです。俺と付き合うてください!」
まっすぐに私を見つめる瞳。
ドンピシャタイプて…。
『ごめんやけど宮くんのことあんま知らんし、タイプ言われても困るねん。いっときの感情やで宮くん。』
「そんなんとちゃいます!!
1年の頃からずっと気になっとって…見かけるたびにどんどん好きになって、ハンカチ拾ったあの日に大好きになりました。初めて話せて飛び跳ねるほど嬉しかったです。」
『私クールちゃうんよ。ほんとは。やからそういう私に惹かれたんやったらやめた方がええよ。』
クールなんかじゃないねん。人見知りで臆病なだけ。宮くんみたいに明るくない。外見しか見てくれない人に心を開きたくないやんか。
「知っとります。最初はクールやな思って惹かれました。誰にも媚びひん高嶺の花やなって。やけど女の子同士で話しとるの何回か見かけて、笑った顔めっちゃ可愛くて…ギャップや思いました!心臓ぶち抜かれました!もっと知りたいって思ったんです。」
『…ほんま宮くんとおると調子狂うわ。
知りたいなんて思ってくれてありがとさん。
今まではな、知ろうともせんで見た目ばっか好き言われてきたんよ。それが嫌やった。』
「俺はさんのこともっと知りたい。ほんで俺のことも好きになって欲しいです。」
『ははっ、難しいお願いやなあ笑』