第10章 約束 ( 北信介 )
「さーん!!!」
『宮くん』
私を見かけるたびに手を振って走り寄ってくる宮くん。大っきいわんちゃんみたいやな。
「さん!
今度俺とデートしてくれませんか!」
『せんよ』
「う…っ!断るん早いですって!」
『そら毎日言われたらこうなるやろ』
そう、最近は会うたびデートに誘われる。
好きな人がおるのに他の人とデートには行かへん。だって信介くんと行きたいやんか…。
「さんが良いって言うてくれるまで何回も誘います!やから俺とデートしてください!」
『せんよ』
「あ、そんなら放課後少しだけ…!
少しだけ寄り道とか…??」
『せんよ』
「そんなら一緒に帰るんは!?」
ほんま全然引かんやん。
ガツガツにもほどがあるで宮くん…
『…それならええよ。』
「え、ほんまですか!?
じゃっ、じゃあ部活終わったら迎え行きます!テニス部の部室で待っとってください!!」
帰るくらいなら…まあええわ。
このままやとほんまに私が良いって言うまで毎日誘ってきそうやもん。
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部活終わりに一応メールを送ると、バタバタと走る足音が聞こえてくる。
そして勢いよく部室の扉が開いた。
「さん!帰りましょ!」
『走ってこんでもええのに』
「早く会いたかったんで!」
『そう』
「なんやのこと好きなんか?」
隣の部室から同じクラスの野球部が顔を覗かせた。
「…やっぱさんてモテます?3年生の中でも人気ですか?」
何を聞いとんねん。
「爆モテやであんな美人男が放っとくわけないやんか。強気でクールなとこが堪らんねん。」
「うわー分かりますわ!」
『くだらんこと話しとらんと帰んで。』
「はいっ!」
信介くん以外の男の人と2人きりで歩くのは初めて。ニコニコと隣を歩く宮くん。
『ほんまに帰るだけやからな』
「はい!それでもいいです!」
『こんなんに時間使ってええの?』
「俺にとっては超贅沢やからええの。さんと一緒に帰れるなんて夢みたいや。」
『大袈裟や。』
だって稲荷崎のバレー部いうたら練習超キツいやんか。すぐ帰って寝たいやろ。
「あ、でも一つだけ我儘言うてもええですか」
『なに?』
「そこの公園少しだけ寄り道したいです」