第10章 約束 ( 北信介 )
「さん!!」
試合の終わった会場をあとにした私を追いかけてきたのか、振り返ると宮くんがおった。
『どうしたん』
「俺のプレー見てくれましたか?」
『うん、見たよ』
「えっほんまですか!やばいめっちゃ嬉しい!」
『そら良かったわ。』
「あと、あの…連絡先交換してくれませんか。」
交換したところで話すことないしなあ。
でも信介くんの後輩やし…どないしよか。
『私あんま携帯見いひんねん。
やから交換しても意味無いと思うで。』
「それでもいいんで!」
…そうやこの子ガツガツなんやった。
まあ信介くんの後輩やし…な。
『まあええけど…
ほんまにあんま見いひんよ?』
頻繁に携帯を見ないのは本当だけど、交換したところでって思ってしまってるのが本音。宮くんと話すようなことなんてないし、多分この子は私に好意を抱いてくれてるんやと思う。応えられへんのに期待なんてさせたアカンしな。
「ええんですか!うわ…うわぁあ嬉しいです!」
ガッツポーズしてぴょんぴょん跳ねとる宮くんの手から携帯を奪って私の連絡先を登録した。
『はい、どーぞ』
携帯を返すと地面に突き刺さりそうなほどにお辞儀をする宮くん。
「絶対連絡します!!」
『返信はあんま期待せんといてな』
「それでもいいです!
ほんまにありがとうございます!!」
「侑!!またどっか行きよったな!」
「…っやばい北さんの声や…!
すんません、俺行きます…っ!
連絡先ありがとうございました!」
バタバタと慌てながら信介くんの声がした方へとダッシュで戻っていってしまった。ほんま嵐みたいな子やな。
その日の夜、やっぱりお祝い言うて信介くんのお家で集まった。お酒飲んで喋って、美味しいご飯食べて、それがしたいだけやねんお母さんたちは。集まるんとか楽しいこと大好きやねん。私も楽しいからええんやけどな。
「泊まっていくやろ?
お風呂いってき」
『うん、行ってくるわ』
先週と同じように信介くんの家でお風呂に入って、置いてあるスウェットに着替えて、信介くんの部屋に戻る。
「おかえり、ほな俺も行ってくるわ」
『いってらっしゃい』
ベッドに横たわるとピロン、と携帯が鳴る。
宮くんからのメールや。