第10章 約束 ( 北信介 )
「ほんなら…っ「侑」」
「…っは!この声は…っ」
何かを言いかけた宮くんを遮る声。
「何しとんねん侑。
はよ戻ってこんかい」
「…っき、北さん!」
『ほなな、宮くん』
「、もう帰るんか?」
『帰らんよ。まだ試合あるやろ?』
試合は見ているだけで良かったのに。ユニフォームを着た信介くんがかっこよすぎて目が合わせられへん。心臓バクバクゆうとる。
「いつも何も言わんと帰っとるから、もう帰るんかと思ったんよ。」
『いつも最後まで見てから帰ってんで。勝ったらまたお祝いや言うて集まるやろから頑張ってな信介くん。』
なにかと理由をつけて集まりたがるお母さんたち。きっと近々信介くん家に集合やな。
「頑張るわ」
「…っさん!俺のサーブとセットアップも見とってください!」
ほんまグイグイやな。
『忘れとらんかったら見るわ』
「はいっ!絶対キメますんで!!」
ブンブンと手を振る宮くんを引きずるように連れていく信介くん。いつもの事なんやろな。
観客席に戻ってしばらくしてから試合が始まる。サーブは宮くん。さっきまで話していた彼とは別人のようなオーラ。ホイッスルを合図に高く上がったボールとそれを捉える宮くん。
ダン!とすごい音を立てて相手コートに落ちたボール。ノータッチエースを決めた宮くんのサーブはその後も面白いように決まる。
本職はセッターなんやな、なんて思いながら見ているとほんまに綺麗なセットアップ。治くんが打つんや、さすが双子やな。この前の黒髪の子もおるやん。角名くんやっけ…みんな凄いな…。
初めて試合中に信介くん以外をちゃんと見た気がする。信介くんのフォローもほんま凄いねんで。それ取れる?っていうボールも取んねん。WSっていうポジションらしいねんけど、信介くんはどこのポジションでも世界一かっこええ。