第10章 約束 ( 北信介 )
『お母さんたち寝てしもうたね』
「ようさん呑んどったからな。
も今日は泊まっていき。」
『うん、そうする。』
先にお風呂を貸してもらって、いつも置きっぱなしにしている部屋着に着替える。
『信介くんお待たせ。』
「ほな、俺も入ってくるわ。
眠たかったら先寝ててええからな。」
『うん、ありがとう』
ベッドに入って信介くんを待っている間、だんだんと瞼が重くなってくる。このまま寝ちゃおうかな…。
どれくらいたっただろう。壁を向いて寝ていた背中に温もりを感じて目が覚めた。
「…寝てもうたか?」
なんとなく寝たフリをして信介くんの声に耳を傾ける。
「クールやなんや言われとるけどほんまはそんなことあらへんのにな。美人なだけちゃうって俺はちゃんと知っとるからな。」
そう言って私の頭を撫でる信介くん。
私が悩んでたの知ってたんだ…。
私を1番知ってるのは信介くんで、こうやって同じベッドで眠るのも私たちにとっては普通で、だけどどんどん大きくなる信介くんへの気持ち。いつか伝えたいなんて思ってるけど思うだけで勇気なんてない。
信介くんはきっと私のことをなんとも思ってないから。伝える勇気がないなら、こうして隣にいられるだけでいいって言い聞かせないと。
「おやすみ。」
その声を最後に再び眠りに落ちた。