第10章 約束 ( 北信介 )
アイスを買って外に出ても2人はまだいた。
「治も角名もほなな。
アイス溶けてまうから帰るわ」
「同じとこ帰るんですか?」
「俺の家に帰んねん」
ポカーンと口を開けたままの2人。
「え、家ですか」
「?せやで。」
「そ…ですか。
あ、邪魔してすんません。」
絶対に何かを勘違いしている2人と、そんな発想には至らない信介くん。
「ほんまにアイス溶けるから帰ろか。」
『そやね。じゃあ私たち帰るね。角名くんと宮…くんは双子やからえっと、治くん?やっけ。またね。』
「あ、はい。また」
2人と別れて信介くんの家まで歩く道のり。小さい頃から何度も一緒に歩いた道。
「せや。」
『うん?』
「今度の試合は見に来るんか?」
『来週やっけ?行くつもりやで。』
「ほんまにいつも見に来るだけですぐ帰ってしまうからなは。」
『稲荷崎の男バレはファンの子が多すぎて話しかけになんて行かれへんよ。』
試合に行っても私はいつも見てるだけ。バレーをしてる信介くんは世界で1番かっこいいねん。かっこよすぎて話しかけられへん。
「ファンゆうても侑たちやろ。俺はそんなんおらんから気にせんと話しかけてくれたらええのに。」
『いいよ…信介くんにはこうやって会えるし。』
「俺こそとおったらアカンのちゃうか?はモテるからなぁ。」
『そんなんちゃうし…一緒におったらアカンとか言わんといてや寂しいやん。』
ほんと、そんなんちゃう。
皆私のことよう知らんと告白してきよる。
1回だけ聞いたことあんねん。私のどこを好きになってくれたんって。そしたらな、しばらく考えてから見た目って。顔と身体やって。それからは何も聞かずに断ることにしてんねん。
皆がみんなそうやないって分かっとるけどな。私が好きなんは信介くんやから別にええねん。