第10章 約束 ( 北信介 )
「おかえり2人とも〜!」
『ただいまお母さん』
「ただいま」
「帰ってきたとこ悪いんやけどさ、お母さんたちアイス食べたいねん!2人の好きなんも買ってきてええから行ってきてくれへん?」
台所から顔を出したお母さん達2人からお金を手渡される。そんなん先に言ってくれれば買ってこられたやん。
『もー、メールでも電話でもして連絡寄越してくれれば良かったやん。なんで帰ってきてから言うん?』
「まあええやん、散歩やと思えば、な?」
『…信介くんが言うなら…ええけど。』
「んもぉ、信介くんがおらんとアイスも買いに行ってくれへんのかいなウチの娘はあ。」
「ほな行こか。」
『…行ってきまーす。』
でも信介くんと2人でいられるならこれもアリやなあ、とか。思ってしまう。
近くのコンビニに着くと、外のベンチにさっきの宮くんとよく似た銀髪の子が黒髪の子と一緒におった。この子らもたしかバレー部やんな。
「…っ!き、北さん!お疲れ様です!」
勢いよく立ち上がった2人。
信介くんて部活でどんななんやろ。
「おーお疲れさん。なんや買い食いか?
治も角名もはよ帰って体休ませぇや」
「あ、さん…」
『私のこと知っとるん?』
銀髪の子が私を見るなり名前を呼んだ。
「侑が話しとるのよく聞いとって。それで。」
『侑…って宮くん?』
「そうです。双子なんで俺も宮ですけど。」
『似とるな思ったけど双子なんやね。』
「北さんの…か、彼女さんですか?」
恐る恐るといった感じで黒髪の子が口を開いた。
ちゃうよ、って言おうとした私より先に
「なんや恋人同士に見えとるんか?」
なんて信介くんが意地悪く言う。
そういういたずらっ子みたいな表情が大好き。肯定していないとはいえ、否定されへんかったことが嬉しい。だからといって信介くんの彼女になれるわけちゃうけどな。
「北さんが女の人とおるん珍しいので。」
「まあ、せやな」
『話しててええよ私アイス買うてくる。
信介くんなにがいい?』
「俺も行くで。
はよ買って帰ろか。」
『うん』
話してくれててよかったのに。
こんな小さなことですら凄く嬉しい。