第10章 約束 ( 北信介 )
「侑!あそこにいるのあの先輩じゃない?」
昼休み、廊下の窓から下を覗く角名が俺を呼ぶ。
「ほんまや。何してんねやろ⋯てか一緒におるん1年のサッカー部の子やん。」
「告白じゃない?」
「OKしてしまったらどないしよ。」
「しないでしょ、ほら1年生の子帰ってくよ」
――――――
side夢主
今朝学校に着いたら下駄箱に手紙が入っとった。昼休みに校舎の中庭で話したいことがあるねんて。ちょっと面倒臭いけどずっと待ってたら申し訳ないし行くか⋯。
『この手紙いれたんキミ?』
中庭へ行くとすでにその子はいた。
名前も知らへん子。
「あ、はい。
急に呼んですんません。」
『別に。話って?』
「あの⋯その。
入学式んときに一目惚れしました。
もし良かったら俺と付き合うてください。」
『ありがとう。でもごめんね。』
「やっぱ彼氏さんおるんですか?」
『おらへんよ。』
「それなら⋯っ」
『でもキミの気持ちには応えられへん。』
「そうでよね⋯すんません。
話聞いてくれてありがとうございました!」
私にお辞儀をして、彼は行ってしまった。
彼氏か⋯そんなんいたことあらへんよ。
だって私が好きなのは⋯。
「?こんなとこで何してんの」
『信介くん⋯?』
「また告白されとったんか?
相変わらずモテモテやな」
『そんなんと違うよ。
好きな人にモテな意味あらへん。』
「好きな人おるんか?」
『信介くんには教えなーい』
「俺に教えんと誰になら教えるんや」
信介くんが好き。
もうずっと前から⋯。
『あ、そうだ。今日また信介くんの家集まるから一緒に帰ってきぃって。この前集まったばっかやのにな。』
「らしいな。まああの日は毎年恒例やん。進級祝いとかいうて集まりたいだけやねん。今日は部活あらへんからすぐ帰れんで。そっちも今日オフやったよな?」
『せやで。女テニのオフは男バレと一緒。』
「終わったら教室迎えに行くわ」
『ありがとう、待っとるね』
所謂幼馴染の私たちは家が近くて家族ぐるみで仲がええ。こうやって夕飯を一緒に食べることも多い。