第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
「一虎を失う?何の話だよ⋯っ」
『それは⋯っ』
「俺が悪いから。全部俺が悪いんだ。
女取っかえ引っ変えして恨み買ってたんだわ。放課後呼び出されて超叩かれてさ。は俺がいつか刺されるんじゃねーかって思っちまったの。」
「そんなのテメェの責任だろ」
「あぁ、そーだな。
でも俺は無意識にずっとコイツを求めてたから。手に入るならどんな理由でも良かった。優しいが断れないって分かってて誘った。もうフラフラしねぇから抱かせてって。」
『ちが⋯カズくん、』
「違くねえって。
はなんも悪くねーの。」
心臓が痛い。ぎゅうぎゅう掴まれてるみたいに痛い。俺の知らないところで2人はもう⋯。
の顔が見れない。椅子に座る彼女も下を向いたまま俺を見ようとはしない。ただ一虎がたんたんと話すのを聞いているだけ。
「一虎はの事がやっぱ好きなんか。」
「うん、が好き。
何回も伝えてみたけど⋯お前がいいってさ。
泣かせちまった。」
「⋯ほんとか?」
『え、えと⋯うん。
2人とも同じくらい大好きで大切だけど⋯愛されたいと思うのは圭介くん⋯だよ。私にそんなこと言う資格ないけど⋯。』
「俺は⋯こんなん見せられても、隠し事されてたとしても、どうしようもなくお前が好きだよ。お前の愛が俺に向いてるってただそれだけで全部どーでも良くなる。」
バカみたいだろ。
そんなことするやつとは付き合えねえって言うのが普通なのにな。俺にはそんな事言えなくて、選択肢にもなくて。もともとはそばにいられるだけで良かったんだから、こんなことをされても俺に気持ちがあるってんなら後のことはどーでもいんだ。
『でも私圭介くんのこと悲しませた⋯。言わなきゃって思ってたのにこんな最悪なかたちで伝えることになった⋯。』
「どんなお前でも俺はきっと好きだから⋯もういいよ。」
『でもそんなの甘えすぎてる⋯っ』
「こんなんされても俺は⋯お前を嫌いになれない。好きなままなんだよ。だから俺のそばにいてくれ⋯。」
『圭介くん⋯』
情けないくらいに好きでどうしようもねぇ。