第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
俺は今何を見させられているんだ。
目の前には力の入らなくなったが机に身体を預けていて。うしろから一虎が⋯っ。頭が追いつかない。何でこうなった?
俺は今日補習を受けてて⋯こいつは図書室で待ってて⋯。机の端に置いてあるやりかけの課題は彼女が勉強途中だったことを物語っている。
事が終わってぐったりしているの瞳からは涙が零れていて、露わになっている素肌には一虎のモノが放たれていた。
「⋯説明してくれ。」
『は⋯っはぁ⋯ん、うん⋯、』
まだ整わない息が行為を現実のものだと、より一層強く思わせる。
「とりあえずそれ拭けよ⋯っ」
鞄からティッシュを取り出したからそれを受け取った一虎が丁寧に優しく彼女の身体を拭く。まるでいつもそうしてるみたいに。
「ほら、綺麗になった。
制服も直してやるから1回立てるか?」
『ん⋯、うん』
こんなに優しい一虎は見たことがない。
ふらふらと立つ彼女を支えながら制服を整えて椅子に座らせると、その隣に当たり前のように一虎が座る。
「⋯っ、今日が初めてじゃねぇだろ⋯?」
頭のどこかでずっと分かってたのかもしれない。最近2人の様子がおかしかった。昨日はに好きだと言って貰えてだいぶ浮かれてた。だから最近の違和感は全部気のせいだって思いたかっただけで。
「あぁ、初めてじゃねえよ。
でも俺がこいつに頼んだ。優しいから断れねぇの分かってて誘った。」
『え、カズく⋯ん?』
「だってそうだろ。」
「ふざけんじゃねぇ⋯に⋯何してくれてんだよ。」
気がついたら俺は一虎の胸ぐらをつかんでた。腹が立った。ずっと越えられなかった一線を、怖くて言い出せなかった気持ちを、コイツはこんなに簡単に⋯。
『ちが、⋯ちがうの圭介くん!』
「が俺にくれた好きは嘘だったんか?」
悔しくて涙が頬を伝う。
なんでお前がそんな顔すんだよ。
なんでお前が泣いてんだよ⋯。
『嘘なんかじゃ⋯ない。圭介くんが好き。だけどカズくんを失いたくなかった⋯。こんなの間違ってるって分かってたけど、それでもカズくんが傷つくなら私は私が傷つく方がずっと良かった⋯っ。』
苦しい⋯息ができない。