第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
あのね、と
話を切り出した声が震えている。
聞きたくない。嫌だ…嫌だ。
「やだ…。」
『え?』
「やだよ。
俺ちゃんとお前だけだったじゃん…」
『まってカズくん聞いて…?』
「聞いたらもうお前に触れられねぇ気がしてやなんだよ。」
頬を涙が伝う感覚。情けねぇ。
でもそれくらい離したくない。
『私…っ、圭介くんが好き、なの。
圭介くんが好きだって言ってくれて。私が気づいたのは昨日だけど…多分ずっと好きだった。だからっ』
こっちを向いて座り直した彼女の口から聞きたくもない言葉ばかり聞こえてきて俺の心臓をぎゅうぎゅうと締め付ける。
「だからキスも許したのか…?」
『あ、あれは急だったから…。』
「なら…俺も強引に奪えばよかった。」
『え…ま、ってまってカズくん…ッ』
逃げようと椅子から落ちそうになるの腰に腕を回し、強引にキスをする。ビクっと揺れた小さな身体。
「震えてる…そんなにヤダ?」
『な、に…するのカズくん…っ』
「が好き。
気づくの遅くて先越されてモヤモヤして、お前の優しさ利用していろいろ順番間違えたけどよ…俺は以外もう抱きたいとも思えねんだ。」
『…っ』
「好きだよ」
『私もカズくんのこと好きだけど…でもそれは、』
言いかけた言葉を飲みこんで俯く。それなら俺は奪うしかねえな。
下を向く彼女を覗き込み、もう一度唇を重ねる。食べるように唇を何度も挟むとピクリと揺れた小さな体はまだ逃げ出そうとしている。
「逃げんな」
『や…めて、よぉ…っ』
「俺とすんの好きだろ?の身体はちゃーんと覚えてるよなあ?」
『あ…っ、やだカズくんダメ…ッ』
抵抗する彼女の手首を頭の上で一纏めにするとあっという間に瞳を濡らして、でもそれを零さないように耐えている。
「もう場地とシた?」
『や…カズくんやめて…?』
「場地とシたかきーてんだけど」
『し…てない…』
「ふーん、じゃあまだ俺のもんってわけだ。」