第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
昨日のあれはなんだ。
担任に呼ばれて職員室に向かったあと戻ってきた教室。いつもより距離の近い場地とがいた。キスしてるんだって理解するのに時間はかからなくて…。
俺のは拒否るくせに…そりゃねえよ。
話し合いたいからって帰っていく2人を追いかけることなんてできなくて、ただそこに立っていることしかできなかった。
考えすぎて寝れるわけなんてなかった。目を瞑ると2人が浮かんできて心臓が握られるように痛い。俺は気づかないうちにきっとかなり惚れちまってた。
無意識に選んだ女は確かにどことなくに似ているようなとこもあった気がする。それでもやっぱは1人しか居なくて。
身体からの関係でもいい。心はそのあとで良かった。俺を見て欲しかった。手に入らないと頭のどこかできっと分かってたんだ。
朝。学校には行かなかった。
行けなかった。
2人に会うのが怖かった。
だけど知りたかった。俺と身体を重ねたの心は少しでも俺にあると信じたかったんだ。
放課後、やっと動いた俺の体は学校へと向かった。もう下校しはじめている奴らがいて、もしかしたらアイツらも帰ってるかもなんて思ったけどそれならそれでいい。だけど下駄箱にはの靴があって、場地の靴ももちろんあった。
教室には誰もいない。場地のクラスにも。
もしかしたら場地は今日も補習で、はどっかで待ってんのか?だとしたら…。
ガラガラ
『圭介くんおつか…』
ガラリと音をたてた扉に反応して、振り返る前に場地の名前を呼んだ。
「よぉ、1人で何してんだ?」
『カズくん?』
俺を視界に捉えて名前を呼ぶ声が愛おしい。
「場地補習?待ってんの?」
『うん、課題やりながら待ってる…って
カズくんどうして今日来なかったの?』
「どうして?聞きたいのはこっちだよ」
聞きたいのはこっちだ。
あんなことがあったのにケロッとしているし、場地を待ってるなんておかしいだろ。
『え…えと、カズくんあのね…っ』
一瞬揺れた瞳。なんで目逸らすんだよ。