第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
次の日、いつも通り迎えに来てくれた圭介くんと学校へ向かった。カズくんの家には寄らずに来たから不安だったけどやっぱりまだ来てなくて、毎日お迎えに行った方がいいかな、なんて思ったりもしている。
この日はお昼になってもカズくんは来なかった。
圭介くんと2人で食べるお昼ご飯。
「一虎まだ来ねぇの?」
『うん…いつもこの時間には来るのに。
2人だけのお昼って久しぶりだから寂しいね。』
「あ?そーか?
俺はお前と2人で嬉しいけど」
『…っちょっと何言ってるの』
「なんだよお前はちげーの?
俺と2人は嫌か?」
『そういうんじゃないけど…もうっ』
「照れてんのかー?」
『べ、べつに…!』
なんだか慣れない関係がくすぐったい。
圭介くんの視線も言葉も全てが優しくて、気持ちを伝えて吹っ切れたように見える。隠す必要がなくなったというか、ダダ漏れ感が否めない。
「あ、俺今日補習あんだった…」
『そっか、じゃあ待ってるよ』
「一虎いねぇし1人でか?」
『うん、図書室で課題でもして待ってる
一緒に帰りたいから。だめかな?』
「ダメなわけあるか。さんきゅーな
終わったら図書室迎えいく。」
『うん、待ってるね』
成績の足りない圭介くんと
出席の足りないカズくん。
ちゃんと3人で卒業したい。
午後の授業を終え、終礼後私は図書室へと向かった。誰もいない図書室にカズくんとの出来事が思い出されてしまう。なんとなく前回来た時とは別の席に座ることにした。
傾き始めた太陽の光が窓から差し込む。
暖かくて眠たくなってしまう目を擦りながら課題を進めているとガラリと扉が開いた。
もう補習終わったのかな。
『圭介くんおつか…』
「よぉ、1人で何してんだ?」
『カズくん?』
こちらへ歩いてきたカズくんが隣に座る。
「場地補習?待ってんの?」
『うん、課題やりながら待ってる…って
カズくんどうして今日来なかったの?』
「どうして?聞きたいのはこっちだよ」
怒りと哀しみを含んだような瞳にはうっすらと涙を浮かべている。
『え…えと、カズくんあのね…っ』
言わなくちゃ…昨日のことをまだ何も話してない。