第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
私が初めてじゃないと知ったら。
しかも相手がカズくん…。
軽蔑されるかもしれない…。
嫌われるかも、しれない。
怖い…でも言わないといけない。
「?また考え事か?」
『あ、えっと…えと。』
「ん?」
『な、なんでもないっ』
「…無理には聞かねえけどなんかあるならちゃんと話してくれ。でもまあ今はすっげぇ幸せだからいいわ、見逃してやる。」
明日カズくんにあったら言わなきゃ。
もうあんなことはできない。
『圭介くん今日泊まってく?』
「んや、帰るわ。」
『そ…っか』
帰っちゃうのか。ちょっと寂しいな。
「んな顔すんなって。帰りたくなくなる。」
『それなら帰らなくても…っ』
「いや…今お前と寝たら多分やべぇ。
絶対手ぇ出しちまうから…帰る。」
『あ…えっ、』
「一緒にいたくないんじゃないからな?
お前のこと好きすぎて…だから。」
『ん、うん…ありがと。』
頬を少し赤らめながら目を逸らして伝えてくれる圭介くん。私のことを大切にしてくれているんだと伝わってくる。それがすごくあたたかい。
圭介くんの気持ちを知ってから受け取る好きは今までとは違う。くすぐったいような恥ずかしいような、だけどすごく嬉くて変な感じ。
荷物をまとめて玄関で靴を履く圭介くんを見ていると、やっぱり少し寂しくてわがままを言ってしまいそうになる。
「んじゃ帰る…っておい、なんだよ。
んな捨てられた子猫見てぇな顔して…」
『ちょっと…寂しいだけ。』
「あー…ほら、ん。」
ん、と言って広げられた腕。
背中に手を回して抱きつけば強く抱き締め返してくれる圭介くん。トクトクと脈打つ鼓動が速い。圭介くんもドキドキしてくれてるって思ってもいいのかな。
『落ち着く。』
「そりゃ良かったわ。
まあ今までもだけどよ、これからは胸張って俺はお前のもんだって言えっから。んな寂しがることねーぞ。」
『圭介くん…』
「俺はとっくにお前のもんだから安心しろ」
『ふふ、うんっ』
明日…明日になったらカズくんに話そう。そしたら全部圭介くんにも話そう。怖いけど…隠すのは辛いから。