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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)



「俺のこと好きなんだ?」

余裕ぶって聞いてみるけど心臓はドクドクと音を立てている。見上げた先にいるはふにゃりと微笑んでから、

『当たり前だよ。だいすきっ』

なんて言うんだ。

こんなの相手にされてないって分かってんのに。お前からの好きは全部嬉しい。

遠くから聞こえてくる足音。この音は…この歩き方は一虎だ。もうすぐで2人の時間が終わってしまう。どうしたらお前の頭の中を俺で埋められる?

『あ、この足音カズくんかなあ』

閉まっている教室の扉の方を見てから俺を見て、カズくん帰ってきたねって満面の笑顔を見せる。それからまた扉の方を見て近づいてくる一虎の足音を聞いている。

こういうのがすごく苦しい。

今お前といるのは俺だろって…言いたくなる。

「…こっちみて。」

俺を見て…

『なーに圭介く、っ』

「ン…、」

大きな瞳に俺を映したと同時にゆっくりと立ち上がってとの距離をゼロにした。

『け…すけくん…?』

何が起きたのか分からずに瞳を揺らす。

「好きだ…俺を見てくれ…」

もうすぐそこまで来ているであろう一虎のことなんか今の俺の頭の中にはなくて、目の前にいる彼女に吸い込まれるようにもう一度キスをした。

『んっ、』

「わりー待たせたー…、っあ?」

勢いよくガラリと開いた扉。

『か、カズくん…っ』

「何して、んの?」

『これは…っえ、と。』

「…俺がにキスした。」

「んなの見りゃ分かるわ…っ
どういうことかって聞いてんだよ…」

怒りと動揺を含んだ表情の一虎。
やっぱりお前もが好きなんじゃねえかよ。好きじゃない女相手にそんな顔するわけがねぇ。

『圭介くん…お話しよ…?
ごめんカズくん今日は2人で帰ってもいいかな。』

「え、あ…あぁ。」

「行こう圭介くん…。」

いつもは俺の手を取って歩くが荷物を持って、そのまま教室を出ていく。俺はあとを追うように放心した一虎の横を通り過ぎた。
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