第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
『なんか圭介くんのお家きたの久しぶりかも!涼子さんいる?会いたい!』
「お袋?夜になりゃ帰ってくんだろ」
『わーい!』
「お前ほんと俺のお袋好きな」
『大好きだよ!えへへ』
涼子さんは圭介くんのお母さん。圭介くんとそっくりですごく綺麗な人。圭介くんを叱る時はすごく怖いけど…。
「風呂先入るか?」
『うん、もう入っちゃおうかな』
「スウェットいつものでいい?」
『うん、ありがと圭介くん』
「うい」
圭介くんの家に泊まりに来た時はいつも同じスウェットを借りる。もう小さくなって着れなくなったやつ。私には少し大きいけど、今の圭介くんが着ているやつよりは小さいからこっちのほうがいいんだ。
シャワーを浴びて戻ると、圭介くんは3人の写真を集めてお母さんたちが作ってくれたアルバムを開いたまま床に座って眠っていた。
隣に座ってパラパラとめくると懐かしい写真ばかりで思わず顔が綻んでしまう。まだ髪の短い圭介くんとカズくん。懐かしいな。
トン、と肩に感じる重み。
圭介くんがもたれかかって寝息を立てている。
『綺麗な髪…』
サラサラと髪に触れると彼の瞼が開く。
「わり…寝てた。」
『ううん、アルバム懐かしいね。』
「あ、あぁ。
棚に入ってんの目に付いたからついな。」
『圭介くんこのときまだ髪短いね』
「そーだな。もうずっと切ってねぇから。
短い方がいいか?」
『長いのも似合ってて好きよ。
でも久しぶりに見てみたいかも』
「そっか。
んじゃ俺も風呂行ってくるわ」
『うん、待ってるね』
圭介くんのいなくなった部屋でアルバムをめくる。ほんとに懐かしい。写真をとる時は何故か必ず2人の間に入れてもらって、それは今も変わらない。夏祭りとか、花火大会とか、クリスマスパーティ、誕生日会、入学式、卒業式…2人の間で私は本当に幸せそうに笑っている。
どれくらい時間が経っただろう。
あれから私は3冊目のアルバムを手にしていた
これは最近のもの。
中学生から今くらいの写真が多い。
「悪ぃ待たせた…」
『全然だよ…、えっ!?』
「…変か?」
『うそ…今切ったの?』
「あぁ、千冬んとこ行って切ってもらった」
いつの間に行ったらしい千冬くんの家で髪を切ってもらったらしく、そのままお風呂に入ってきたと言う。昔みたいなさっぱりした圭介くん。